進士五十八 『日本の庭園 造景の技とこころ』

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日本の庭園 - 造景の技術とこころ (中公新書(1810))
進士 五十八
中央公論新社
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著者は元東京農大の先生で、行政や官公庁の環境づくり・町づくりとかを検討するいろんな委員会で委員を勤めておられるお方。その道では大変偉い人物、ということになるのだが、この本はちょっと……。まず、人工的な都市設計に疲れた現代人には、自然の力が必要、自然の力があれば「ふるさと」を思うようなメンタリティも育つハズ、みたいな冒頭からしてイチイチ話がデカいし、こういう物言いは学問というよりスピリチュアルなレベルの話になってしまうので印象がよろしくなかったですね。

第一部は日本式庭園の発展史、第二部は日本式庭園の技術解説、第三部は日本の名園三十六景の案内となっているのですが、一番読み応えがあるのは第三部の観光案内みたいな部分。ただし、写真は白黒ですし、枚数も全然ないのでこれなら普通に観光ガイドを買ったほうがマシ。その他の部分も、話の編み目が大き過ぎてスカスカな感じがしました。第一部の歴史パートの見立ては「神仏の庭と人間のにわ」というタイトルから察せられるように「昔は黄泉の国だの浄土だのといった《異界》の表象として庭園が作られたけれど、近代に入ると西洋の庭園観が入ってきたりして、庭そのものの美が追求されるようになったんだよ〜」みたいな流れ。日本式庭園の根本は、アニミズム! と力強い主張がありますが、その主張を詰めるような記述に欠けるため、はあ……そうかもしれないですよね、で済んでしまう。というか、庭園の門外漢でも「まあ、そういうことはあるでしょう」と想定できる範囲で話がまとまってしまうので面白くない。

第二部も「あらゆる景観資源のなかで『水』は最高のものである」とか「垣根は人類史とともにある」とか、各項目の冒頭から飛ばし過ぎていてちょっと……。この飛ばしと、説明のアンバランスさが目立ちます。あと年寄りの先生が書いたこの手の本でときどき見られる、自分の研究結果が特別扱い丸出しで登場するのもねえ……。しかも、やっている調査や研究と、そこから分かったことも「え、こんなことしか言えないの!?」という逆に驚くべきモノ。一番笑ったのは以下の部分。
私たちの調査では、園路環境の違いが歩行速度に影響を与えることがわかっている。造園空間では、空間の質が高ければ高いほどゆっくり歩くということ。ゆっくり、ゆったりと景観や環境を味わうべく歩行速度が小さいのである。(P.108)
ふ、普通だ……!!! そりゃせっかく庭園に来てるんだし、質が高いところはじっくりと観てまわるじゃないですか……!!!!!! 他にも、庭の一坪あたりの石の数を計算して、石の数が少なければ少ないほど、庭が自然を抽象化して表現している、とか言ってたりするんだけども、その数値、それを言うのに必要か〜!? 学問の体裁を整えるためだけの数字じゃないの〜!? とか思いました。

はっきり言って雑な新書。何かのきっかけで庭に興味を持っても、これを読んだら逆に「え〜、庭ってこんなもんなの」と思って冷めちゃってもおかしくないですよ。庭を美的に表現する語彙が足りてないし、庭に日本の思想が宿っている、と言っても庭の姿からその日本の思想を読み解くだけの教養が筆者に足りてない感じがしますし。「日本庭園が良いのは、それが日本人の精神的原風景にマッチしてるからであーる!(日本人ならわかるよナ!!)」みたいなスピリチュアルな話しかしてないですもん。

日本庭園については、もっとガッツリ「日本庭園のイコノロジー」的な本があれば読みたいところです。そういうものが無かったら、カラー写真が入った観光ガイドを片手に実際に旅行したほうがずっと楽しそう。

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