ヤマシタ トモコ
祥伝社 (2011-04-08)
祥伝社 (2011-04-08)
ヤマシタ トモコ
祥伝社 (2009-09-08)
祥伝社 (2009-09-08)
ただし『ひばりの朝』は、ちょっと異色の作品である。この作品では主人公自体が「こじらせ」ているわけではなく、むしろ、自らの意志とは無関係に女性性が他者に向けて発信されてしまっていることが問題化されている。他者は、好き勝手にメッセージを解釈してしまう、とはまるでコミュニケーションの本質でもあるのだが『ひばりの朝』では、受信者が主人公に対して、悪意も持って返答する、これが物語の大きな鍵となる。そこでの悪意とは例えば、女性が普通に生活をし、例えば、電車に乗ったり、街を歩いたりしているあいだに、まったく知らない人から、性的な目線を投げかけられる問題とも比べられるだろう。あるいは、暴力的に女性が犯した犯人が「向こうのほうから誘ってきたんだ」とか供述したり、その暴行事件を見聞きした第三者が「あんな格好していたら、レイプされるのも当たり前だ」と批判したりする、そうした種類の悪意である。はっきり言って、気持ちよく読める話ではない。
短編集『ミラーボール・フラッシング・マジック』は、ヌルい山本直樹みたいな短編があったりして、これまた読むのがツラいのだが(あと絵があんまり上手じゃないのがそもそも……)、ある程度まとまってヤマシタ作品を読むと、これがある種の女性に好ましく受容されているのもなんとなく理解できる。女性のあいだでどんな風に評価されているのかリサーチしているのかわからないけれど、かつてだったら魚喃キリコとかを好んで読んでた類いの方々が読んでいそうな気がする。奇しくも『ミラーボール・フラッシング・マジック』の帯に、花沢健吾が寄せているコメント「男が読むべき漫画です」とは、ちょうど魚喃キリコの作品に対しても言われていたことではなかったか。
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