海老沢泰久 『美味礼賛』
辻調理師専門学校の創始者、辻静雄の伝記小説を読む。あくまで辻静雄をモデルにした小説という形でノンフィクションではない。だから、どこまでが事実でどこまでがフィクションなのかはわからないのだけれども、この人物がいなければ、日本のフランス料理は30年は遅れたんじゃないか、彼がいなければ、自分が日本で食べたフレンチもありえなかったんじゃないか……と思うと、辻静雄には感謝しても仕切れないような感覚に陥りるし、「ホンモノの料理」を追い求める小説内の辻静雄の情熱、そしてそれを支える人たちの善意には何度も目頭が熱くなった。いや、普段小説を読んでてここまで感激してしまうことってないんだけれど、めちゃくちゃにアツくてスゴく良い小説。もしこれを10代で読んでいたら、辻調グループの門を叩いていたかもしれない。ロマンですよ、これは。「ホンモノ志向」と言えば、徐々にわたしのなかで神格化されつつある伊丹十三にも同じことが言える。伊丹十三のエッセイのなかで、辻静雄への言及があったと思うし、絶版の『フランス料理を私と』は辻静雄が大きく関わってできた本だ。なかなか手に入らない本だけれども何としても手に入れたいと思った。
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