チャーリー パパジアン
浅井事務所発行(技報堂出版発売)
売り上げランキング: 69,914
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いっちょホームブルーイングやってみっか、という気持ちで読み始めたわけではないんだが、大大大名著だったのでビール好き全員にオススメしたい。ビール造りの基本の基本については先日紹介した『うまい酒の科学』にも掲載されている。そこからさらに足を踏み込むにはうってつけの一冊であろう。醸造に使う器具、ビール酵母の種類、ホップの種類、大麦以外に使う穀物の種類、そしてそれらの使い方と効果、世界のビールの種類と製法、それらが読みやすく面白い文章で説明されている。レシピですら面白いんだから、ちょっと驚異的である。とにかく、ホームブルーイングという趣味の魅力を余すとこなく伝えている。気合の入ったホームブルワーのなかには、シメイの瓶の底に残ってる酵母を自分で培養して、その酵母でシメイを再現する猛者もいるらしいが、そこまでする面白さが本書から理解できる。
歴史的なウンチクも良い。アメリカではバドワイザーみたいなライトタイプのビールが主流だが、禁酒法以前は国内で2000種類以上のビールが作られていたんだって(禁酒法によって、大手の醸造所のみが生き残った結果、ライトタイプのビールばっかりになってしまった、とか)。世界的にマイクロブルワリーのブームが来ているみたいなのだが(特に最近の東京は、クラフトビールのお店が雨後の筍のようにできている印象)、それは過去への回帰ってことなのかもしれない、と思った。
読んでるだけで、のせられてしまってホームブルーイングを試してみたくなるが、わたしは細かいことが苦手なのでやらない。そういう人が、ビールの作り方を勉強してどうするのか、と思われるかもしれない。その問いに対して明確な答えを提出するならば、それはもちろん「真面目にビールを飲むため」であろう。ビールをただ飲むんじゃなくて、その味わいや色、香りからこのビールがどんな風に作られているのかを考える。考えるためには、知識が必要だ(ただホームブルーイングとちゃんとした醸造所では設備の規模に違いがあるとはいえ基本は一緒だ)。知識をもとにビールを飲む、そして考える。言い過ぎかもしれないが、本書で得た知識は一杯のビールに物語を生むためのツールのようなものだ。
翻訳の版元が個人でやっている事務所らしいので、誤字がちょっと気になるのだが翻訳はこなれている。あと、日本で個人が許可を取らずに普通のビールのアルコール度数のビールを作ると犯罪になるので注意(日本の酒税法に関しては本書では一切触れられてません)。序文はあのマイケル・ジャクソン(King of Popと同姓同名のビール・ウィスキー研究者。故人)が書いています。
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