戸部 良一 寺本 義也 鎌田 伸一 杉之尾 孝生 村井 友秀 野中 郁次郎
中央公論社
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たとえば、ノモンハン事件、ソ連の機械化兵団に関東軍がバカ負けするという武力衝突。ここでは現場にいる関東軍が「ソ連軍なんか気合いでなんとかできる。絶対勝つ!」と無謀に突っ込んでいて、無駄な消耗を繰り返したんだけれども、このとき遠く離れた中央部ではちゃんと「いや、あんたら負けるから、無駄な戦いは止めろって」と何度も忠告してるのだった。でも、関東軍は「いや、勝ちます。勝てますから、大丈夫です」と言って、その忠告を聞かない。
その強硬な姿勢に、中央部も「う、うん? 一応、止めたほうが良いよ、って言ったからね、俺(最後は現場で判断してね)」とぼんやりした指示を出してしまう。読んでて、あるある〜、と思ったね。わたしが中央部の担当者だったら、2度ぐらい忠告しても相手が考えを変えなかったら(めんどくせっ)と思って、同じようなぼんやりした指示を出してしまうと思う。そして関東軍が負けたら(だから、言ったじゃん)とボソボソ言う。全力で止めにかかるのが、ひいては自分のためでもあるはずなのに、目の前の(めんどくせっ)という感覚によって、間違った選択をしてしまうのって恐ろしいことだ。けれども、それを自然にやってる自分の姿にも読書のなかで気づく。
読んでてそんなのばっかりなのだが、他にもいろいろと面白くて、この本は「日本はもうダメかも、いやダメだ」みたいな局面になる度に、繰り返し読まれてきたんだろうな、と思った。とくに戦争技術開発の話だとかさ。戦争の勝ち負けを左右した技術開発を、本書では日本は一点豪華主義だ、としている。零戦はむちゃくちゃスゴい戦闘機だったが、高練度なパイロットが必要だったし、製造にも職人技が必要だった。対してアメリカは徹底した標準化と大量生産によって操縦しやすい戦闘機をバンバン数を作って、数で対抗した。フォーディズムの勝利! だったんだなぁ、とか感心するが、これ、今、日本のメーカーが陥ってる苦境と同じ話なんじゃないのか、と思った。
とは言えだ。戦争関連の本では以前に『太平洋戦争の歴史』という本を読んだときにも思ったんだけども、日本はダメダメだった、勝てるはずのない戦争に挑んでたんだから、当時の日本は狂ってたんだ、とか総括されがちじゃないですか、先の戦争は。でも、こうして戦争史を振り返ってみると、当時の日本は狂ってなんかおらず、実にシステマティックに負けたんだな、って感じる。だから「過去の日本人は狂ってた」っていうのは、当時の日本人と今の日本人は「違う人間です」という責任の放棄的なものでしかなくて、勿体無い思考停止じゃないのか、と思ってしまう。ダメな点も確かにあった、けど、そのダメな点がハマりまくってバカ勝ちしてた時期もあったんだよね。で、そのバカ勝ちは、それなりの期間あって、あ、最終的には負けたんだけど、日本って結構頑張ってたんじゃん、イメージと違ってたわ、と思ったりもするんだ。
しかしさ、国としてすげえ経験してるんだな、と魂消てしまいますよ。「あ、そうか大規模な艦隊戦を最後にやったことある国って日本とアメリカだけなんだ。なんっつー貴重な経験をもってるんだ我が国(とアメリカは)」とか、いちいちびっくりする。
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