ブルーノ・シュルツ『肉桂色の店』(工藤幸雄訳)

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 「現代東欧文学全集」のうち、ヴィトルド・ゴンブローヴィチとブルーノ・シュルツの作品が収められているものを読んでいるのだが、シュルツの『肉桂色の店』という作品がすこぶる面白かった。ストーリーらしいストーリーはないのだが、奇妙な人物や状況が「わたし」の目を通してつづられている点は、「禍々しいマルセル・プルースト」や「官能的過ぎるフランツ・カフカ」みたいな表現が自分のなかでしっくりくる。文章を目で追うだけで、目の前がチカチカするようなカッコ良い文章が満載。これは良い訳だなあ。いずれ全集も買うと思います。



柵の方へ向かって草の大マントは膨れあがったせむしの肩をもたげている。それは庭が大きく寝がえりをうち、いかつい、農夫のような背をこちらへ向けて、大地の静けさに憩うかのようにもみえる。そんな庭の肩のあたりにまたがって、八月の女のみだらさが大きな山牛蒡の深い茂みの凹みにずかずかと割り込み、細かな毛の生えた葉や、生い繁る緑の舌をわがもの顔にしていた。


(『八月』より)



 うーむ……痺れるほどカッコ良い。シュルツという作家は生前はかなり不遇で、ナチ占領下のポーランドでゲシュタポに射殺される……という悲劇的な人生を送ってるんだけど、そういう人の素晴らしい作品が読めるようになっているのはまことに喜ばしいことである。



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