白水uブックスフェア応援企画「妙なところのツボをつかれる3冊」

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もちろん、他にもおもしろい白水uブックスはたくさんあるとおもうので、探してみるのもいいのではないでしょうか。そしていい本が見つかったらわたしにも教えてください。


2008-07-08 - 空中キャンプ



 白水uブックス良いですよねー。普通の文庫よりほんのちょっと高い、ってことに目を瞑れば、この文庫が一番好きかも、ってくらいに楽しそうな本がたくさんある。スティーヴ・エリクソンに出会ったのもこれがきっかけだったし(本当に面白い小説なので『“本当に読んだことがない本”を読みたい!』という方に是非オススメしたいです)、なにより前衛っぽいもの/ちょっと一般ウケはしそうにないものも取り上げられているところが素晴らしい。今後はベケットの作品なんかもこのシリーズに入れてくれないかなあ、と願いつつ、私も「白水uブックス」から面白い本を選んでみます。



ある首斬り役人の日記 (白水Uブックス)
フランツ・シュミット
白水社
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 こちらは、中世ドイツで361人の犯罪者に刑罰を与えた、という処刑人フランツ・シュミットさんが書いた日記。「今日は誰々をムチ打ちの刑にかけた」とか「誰々の首を斬った」とかいうシュミットさんの仕事内容が淡々と綴られていて、文学的要素だとかはほとんどないんだけど、ものすごく面白い本です。中世という時代は、現代とは違った道徳感があったのだろうなあ、と思ってしまうぐらいシュミットさんの手にかけられた犯罪者たちの罪状が残虐。



最初は馬上の男を撃ち殺した。次に妊婦を生きながらにして切り開いたが、胎児は死んでいた。3番目は同じく胎内に女児を宿していた妊婦を切り開いた。4番目はまたしても妊婦で、彼女を切り開けば双生児の男の子は生きていた。ズンベルクのゲオルクが、おれたちは大罪を犯してしまった、こいつらは司祭の所へ連れて行って洗礼を受けさせてやろうと言った。しかしフィラは、おれが司祭になって奴らに洗礼してやると言いざま、赤児の脚をつかんで地面に叩きつけた。



 以上は、シュミットさんによって処刑された「妊婦ばかりを狙って殺人を繰返していた殺人集団」の罪状です。これが物取り目当てじゃなくて、特に目的無く「妊婦を殺していた」というところが恐ろしい。



不死の人 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
ホルヘ・ルイス ボルヘス
白水社
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 ラテンアメリカの作家が書いた小説を読んでいて思うのは「なんだかわかんないけど、とにかく面白いなあ」ということが多くて、ボルヘスの作品郡は特にそんな感じだ。この『不死の人』という短編集にも、そういう「なんだかよくわかんない小説」がたくさん収録されています。


 表題作の「不死の人」からしてすごいですよ。「20世紀前半にヨセフ・カルタフィルスという男が、とあるところの公女にものすごく古い本を売ったんだけど、それには彼が書いたと思わしき原稿が挟まれてて……その原稿によれば彼はローマ時代から『死なないで現在まで生きてる男』ということになっていて、過去の歴史についての事細かな記述や、歴史上の大人物とあった記録が残されている……でも、ここにはいろんな本からの引用が含まれてるし、実は偽書なんじゃねーの?どうなの?」みたいな感じ。


 「オチがない話には興味が無い」という方にはオススメできませんけれど、「読む迷宮」という不思議な読後感がだんだんと「読む麻薬」に変わっていくのは本当に楽しいですよ。



いまやわたしは、この物語の名状しがたい中心に到達した。わたしの作家としての絶望はここに始まる。あらゆる言語は、対話者同士が同じ過去を共有していることを前提にして習得される符牒のアルファベットである。


(『アレフ』より)




リア王  シェイクスピア全集 〔28〕 白水Uブックス
ウィリアム・シェイクスピア 小田島 雄志
白水社
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 最後に古典中の古典であるシェイクスピアの『リア王』を。白水uブックスでは小田島雄志によるシェイクスピアの全集が刊行されていますが、これは数あるシェイクスピアの翻訳のなかでも最も読みやすい訳になっているのではないでしょうか。「なんでもかんでも読みやすいように、新訳で」という光文社的な試みには「そうじゃないだろう」と思う私ですが、これはちょっと別格的な出来になっていると思います。


 新潮文庫の福田恆存によるゴツゴツとして、カッコ良い日本語ももちろん素晴らしいのですが、小田島訳はスピード感が違う。前者が2時間ドラマなのに対して、後者はわずか30分の間に一話完結してしまうような趣があるような気がします。


 押韻や言葉遊びの部分を、強引に日本語のダジャレに結びつける技も見事。ダジャレが面白いわけではないのだけれど、そこに訳者のひらめきが見受けられるところが刺激になります。



真実ってやつは野良犬だね、鞭でたたき出されるんだから。奥方犬は暖炉のそばでぬくぬくと屁をたれてるっていうのに。






2 件のコメント :

  1. この三冊は、どれも読んだことないので、まずは「不死の人」から読むことにします!

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  2. 私もニコルソン・ベイカーから読んでみますね!他の柴田訳本にも手をつけつつ。ミルハウザーは何から読めば良いか、などよろしければご教授くださいませ。

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