ジョージ秋山『銭ゲバ』

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 ジョージ秋山作品については大昔、私が小学校高学年の頃に購入していた『ガンガン』か『ギャグ王』(なんか懐かしすぎる)で『ドブゲロサマ』という連載が始まったのがものすごいトラウマになっており「さぞかし業の深い漫画を書く人なのだろうなあ……」と敬して遠ざけてきたのだが、実際代表作のひとつである『銭ゲバ』を読んでみたところ、予想を大きく上回る衝撃的な作品だった……。昨年ドラマ化されたものは未見だが、一体こんなものをどう処理したら現代の放送コードに適したものになるのか……。この作品のハードコアな業をマイルドなものにしたらまったく面白くなくなっちゃうだろうしなあ……。





 主人公は「世の中銭ズラ」がポリシーの男。金のためなら何でもする、と心に決めた主人公は、殺人を繰り返しながら富と権力を手にしていくストーリーは一種のピカレスクものとして読むことができる。ただ、主人公の胸には常に欠乏感があり、それは決して金では買うことができない。この作品の絶望的な終幕は、そうした金で埋めることができない欠乏への諦念として捉えることもできるだろう。このラストは本当に救われなさすぎて唖然としてしまうのだが、その衝撃こそがこの作品が誇る強さなのだろう。劇中で主人公は、もしかしたら自分の欠乏を埋めてくれるかもしれない人物に出会うのだが、自分が強く求めていたはずの金によって裏切られる結果となる、といった展開も泣けた。





 主人公は非道な人物として描かれるのだが、権力者である彼に虐げられている市民もまた極悪な人間性を発揮しているところもすごかった。主人公が弱っているところを見つけたらリンチすることを容赦しない。善人がほとんどでてこないけれど、その社会に潜む悪意、というか、善人面する市民の性質の悪さみたいなものがこの短いエピソードのなかには集約されているように思われた。その恐ろしさは、例えばTwitterで困っている、とつぶやくネパール人の料理店に大挙しておしかける、といった現象がもつ恐ろしさと共通している。優れた道徳的作品なので、読んでよかったなあ……と思いました。





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