アポロドーロス 『ギリシア神話』:本当はこわいギリシア神話

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ギリシア神話 (岩波文庫)
アポロドーロス
岩波書店
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アポロドーロスは紀元1世紀とか2世紀にいたという著述家で、この『ギリシア神話(Bibliotheke)』は彼が収集したギリシア神話をまとめたものだそう。なんでも現代に広く伝わっているギリシア神話とはヘレニズム文化の影響で、マイルドになってしまったそうで(これは井筒俊彦の『神秘哲学』*1でも指摘されていたかと思います)すが、アポロドーロスの本はヘレニズム以前のワイルドなギリシア神話が収められているのだそうです。彼が生きた時代はローマ時代の全盛期。にも関わらず、ここにはローマの文化も見当たらない。それは著者がこの本を正真正銘のギリシア文学を後世に伝える参考書となるように書いたからだ、と言います。ホメロスやヘシオドスへの言及もあり、単なる読み物というよりかは「ギリシア神話研究書」に近いのかもしれません。ページをめくっていくと目につくのは、ギリシアの神々の交接、強姦、殺戮、不倫、戦争、虐待ばかりが描かれており、ギリシア文化がヘレニズムと出会わなければ教育委員会が眉をしかめる結果となったことは火をみるより明らかでしょう。美しい女に出会えば、それが人妻だろうとなんだろうと犯して孕ませてしまう神々の性格はとてもではないがちょっと理解の範疇外にあるようにも思われ、古代ギリシア人はこのような暴力的な神話を語り伝えることで何を感じていたのか。神々の考えること、英雄の考えることは凡夫には計り知れないことでしょう。ほとんど狂気の沙汰の連続のなかから感じるのは、こうした神話が芸術的なインスピレーションの源泉なのだとしたら、やはり芸術家のセンスは霊的なもの、理性では理解することのできないものを受容してしまうのではないか、ということ。






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