集英社「ラテンアメリカの文学」シリーズを読む#17 バルガス=リョサ 『ラ・カテドラルでの対話』

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ラ・カテドラルでの対話 (ラテンアメリカの文学 (17))
バルガス=ジョサ
集英社
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2009年から続く「ラテンアメリカの文学」シリーズを読む企画も、このバルガス=リョサの『ラ・カテドラルでの対話』を読み終えることで残り1冊となった。こちらはペルー初のノーベル文学賞受賞者の大作で(シリーズ中もっともヴォリュームがあるものだと思う)コルタサルの『石蹴り遊び』ほどではないものの、なかなか技巧的には凝った小説。

新聞記者の主人公(白人)と、かつて主人公の家で使われていた黒人運転手が偶然再会し、酒場での昔話に花を咲かせている、というのが大枠なのだが、その対話のなかでは複数の時間・場面が複雑に挿入されたり、入れ替わったり、とややこしい。でも、それが極端な読みにくさを生んでいるわけではなく、長くてなかなかつらいけども面白く読んだ。こういう風に複数の時間軸がフーガみたい絡んでいる小説って『ゴッド・ファーザー PART II』みたいだな、と思う。ちょうどバルガス=リョサの『楽園への道』もそんな構成の小説だ。場面の移り変わりの回数を極端に多くした『ラ・カテドラルでの対話』は、タランティーノの映画に準えるほうが適切かも。とくにその技法が上手くいっている箇所では、複数の場面の会話文が応答しあい不思議なドライヴ感がある。こういう話の見せ方もあるのか、と感心してしまった。

しかし、話としては特にすごいわけではない。基本的には主人公の新聞記者のビルドゥング・ロマンスなのだ。そのなかには、金持ちのおぼっちゃん(主人公)が学生時代に左翼に目覚めちゃう、きっと日本でもあったであろう「時代」が書かれている。このへんはとても青春小説っぽい。「マルクス主義が〜」とか言いながらも、そのなかで恋愛があったり、思想と関係ないいざこざがあったり、左翼もテニサーや部活とかわんなかったんじゃないか、と思った。それとあわせて、政治的な陰謀だの殺人事件だの、金持ちの頽廃だの、差別だのが描写されるんだけれども、いろんなつながりが見えていくと、火曜サスペンス劇場とか2時間ドラマみたいなのだ。2時間ドラマを5本ぐらいより集めて、タランティーノが編集したらこんな感じなのではないか。内容よりも、複数の時間がどこかで交差するその瞬間の驚きありきの小説でもあるのかも。

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