綿矢りさ 『かわいそうだね?』

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かわいそうだね? (文春文庫)
綿矢 りさ
文藝春秋 (2013-12-04)
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『かわいそうだね?』の文庫には表題作と「亜美ちゃんは美人」という2つの中篇を収録している。どちらも2011年の作品で、わたしが読んだこれ以前の作品は2006年初出の『夢を与える』となる。それで、5年のあいだに、スゴい作家になっちゃったな、と驚嘆した。

人間の描写に強烈なブラックネスが混じっているところが、綿矢りさの小説の好きな部分だった。彼女は、冴えない人間を、悪意さえ感じるほど鋭く、柔らかい表現をつかって描いてしまう。時速200kmぐらいでマシュマロを投げつけて、人を殺す感じの、そうした凶悪さがすごく好きだった。ラッセンに言及して喜んでいる感じとか、ニューエイジに真面目に言及して喜んでいる感じとか、そういうねじれた感じにも近いかもしれない。そして、今回読んだ2つの作品は、さらにドライヴがかかっていて、綿矢りさの悪さが前面に出ている。読んでいて息ができないぐらい笑ってしまった。

でも、それだけじゃなかったんだよ、恐ろしいのは。なんだかそのブラックネスに、安野モヨコやよしながふみのような、どこかに転がっていそうな、読者の共感を生みそうなストーリーテリングが備わっているではないか。キャラクターの作り方も良ければ(必ずひとりは村上春樹の小説にでてきそうな感じの人が配置されている気がする)、ひとつひとつのエピソードが小気味よく配置され、繋がっていき(中篇のサイズ感が功を奏しているのかもしれないが)どちらも見事な構成になっている。序盤・中盤・終盤と隙がない。ホントに終わりまでしっかりしているんですよ。「亜美ちゃんは美人」なんか、ちょっと感動しちゃいましたね……。主人公が、自分とはまったく違っているハズの他人のなかに、自分を見いだすような、ハッとする描写があってねえ……。すごく良い。

ふざけてる感じもありつつ、しっかりと読ませるテイストは、なにかNHKの深夜にやってるドラマに近いものを感じた(決して民放ではない)。そして、すごく映像化しやすそうな作品だとも思う。でも、ただ単純に書かれていることを映像化しちゃったら全然面白くなさそうで、その文章から映像へのコンヴァートできなさにまた綿矢りさの特別な才能を感じたりもする。あと今回、初めてこの作家を「同世代の人っぽいな〜」と思った。

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