田付貞洋(編) 『アルゼンチンアリ: 史上最強の侵略的外来種』

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アルゼンチンアリ: 史上最強の侵略的外来種

東京大学出版会
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本邦初のアルゼンチンアリ研究書を読む。これは大変に面白かった……!

本書を人に紹介してもらうまでわたしもアルゼンチンアリなどぜんぜん知らなかったのだが、アルゼンチンアリは、在来アリを駆逐しまくってさまざまな問題を発生させているのだという。しかし、体長約3mm、毒針があるわけでも協力な顎をもっているわけでもないこのアリが、なぜ、生存競争に勝てるのか。そこにはアルゼンチンアリの特異な生態がある。

アリの卵を生む女王アリはひとつの巣に一匹と想像しがちだが、アルゼンチンアリはひとつの巣にたくさんの女王アリを有する多女王制の社会を持つ。とにかく子供を生みまくり、ワーカーをたくさん巣に持つ。アルゼンチンアリの優位性はまず、この数にある(餌が少なく活動量が落ちる冬は、ワーカーたちが女王たちを殺戮することで生産調整をおこなうという社会性も恐ろしい)。

さらに普通のアリなら同じ種類でも生まれた巣が違えば、縄張り争いが起きて、同種のなかでも増殖に抑制がかかる。これに対して、アルゼンチンアリは巣が違ったとしても闘争が起きず、むしろ協力関係を結び、巨大なコロニー(スーパーコロニー)を形成する。これによって数の優位性はさらに高まっていく。スーパーコロニーがあるところにはもはや在来アリはほとんど見られなくなるぐらいアルゼンチンアリの侵略力はすごいらしい。ちなみに天敵らしい天敵もまだ見つかっていない。

すでにヤツらは日本にもやってきており、山口県岩国市ではアルゼンチンアリが大量発生しており、住民を困らせているという。家屋へとどこからともなく入り込み、生ゴミだとか食品だとかにアリがたかりまくっているとか、夜布団のなかに入ってきて咬まれるとか聞けば、おぞましすぎるし、嫌すぎるので大変だ。アルゼンチンアリの行列は横幅が2-3cmぐらいの帯状になるのだが、この写真も、苦手な人がみたら「ざわわ……っ」と鳥肌が立つと思う。

しかし、ここまで読んでも「在来アリがいなくなったぐらいで、生態系になにか影響があるのか?(だって、たかがアリでしょ?)」と思う人が大半だと思う。だが、影響大アリなのだ。アリだけに!!

アルゼンチンアリは人海戦術によって他の小動物を襲ったりもする(虫だけじゃなくて、鳥のひなとかトカゲとかネズミとかも食べるらしい)。また、種子分布をアリに依存している植物にも影響がある(アルゼンチンアリは植物の種をあんまり運んでくれない)。さらにアルゼンチンアリはアブラムシが出す甘い汁が大好き。なので、アブラムシを守りまくってしまい農業にも影響がでる。ミツバチが集める花の蜜もアルゼンチンアリが食べ尽くしちゃうのでハチミツもとれなくなる……と影響大アリなのだ。アリだけに!!(繰り返し)

編者の田付貞洋を「元締め」とする研究グループが、この驚怖の外来種をどうにか駆逐しようと奮闘する様子もあっついドキュメンタリーのようで面白い。2003年におこなわれた岩国市での駆除実験では、真夏に昼夜連続合計30時間にわたって「1時間ごとに1人がアリを1000頭以上も数える」という苦行をされたなど「それはアリ地獄だ……」と思ったし、原産国アルゼンチンで路上調査をしていたら爆弾を仕掛けているテロリストと間違われて10人以上の警官に銃を突きつけられた、などととんでもない記述もある(思わず、笑ってしまったが)。研究書だし、比較的高価な本だけれども、とくに専門知識がなくても面白く読めるので、広く読まれると良いな、と思う。


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