安丸 良夫
岩波書店
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神様の由緒正しさ/正しくなさを判定は、水戸学や国学から発展した国体神学によってなされた。『古事記』に載ってる神々みたいなのをお参りしないと、ダメですよ、と(その他、国に貢献した人たちなどを祀らないと、祟られますよ、とか言っている。靖国神社の元になった東京招魂社もそういう議論から建てられたものだ)。廃仏毀釈や神仏分離といった政策に、神道で国民全員一致団結しようぜ! 的な意味合いがあったことは分かるけれど、こうした神々の整備のプロセスを知ると、中央集権的な国民精神の統合よりも「なんか日本人の精神性ってバラバラすぎねえ?」という危惧から生まれた標準化の面に目がいってしまう。
もちろん、そうした日本人の精神の標準化には抵抗勢力があって、お坊さんが「村一体を丸焼きにしてやる!」と息巻いてたり、「俺らはスピリチュアルな存在に守られるから絶対死なない(銃弾とか当たらないから!)」と信じて特攻し、当然のごとく逮捕……死傷者を出す事件に……などテロリズムに走った人たちもなかには存在していたらしい。明治政府は、土着のものを改める難しさに直面していた。しかし、ここで行われた精神の改革、習俗の変更は今にも多く残っているわけで、政策はかなりの面で成功していた、とも言える。
あまり大きくページを割いているわけではないけれど、本書を読んでいて、明治天皇という人物にも興味が湧いた。新たなカリスマとして担ぎだされ、新しい国家の頂点に相応しいキャラクターとして教育された……わけだけれども、そういう思惑に、バッチリと適応してしまった明治天皇がすごいんじゃないの、と。
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