マージナル・ショパン

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Chopin: Piano Works, Vol. 3
Chopin: Piano Works, Vol. 3
posted with amazlet on 07.03.30
Fryderyk Chopin Pierre Barbizet Samson Francois
Emi Classics (2001/10/01)
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 先日、サンソン・フランソワ*1が演奏するショパンの録音を一挙に収録したEMIのボックス・セット(10枚組)を購入したのでここ最近はずっとショパンを聴いている。ショパンの音楽を「フランスの単なるサロン音楽だろ?」とバカにして今までほとんど聴かず嫌いを貫いていたのだが、聴いてみるとまぁ素晴らしいこと。


 こういう「好みの矯正」は演奏者の力による場合が多いけれど、フランソワの演奏が自分のツボにハマったのだと思う。彼の演奏には、ショパンによって書き遺された楽譜が演奏されている、というよりも、音楽が今そこで生成されているような趣がある。


 この10枚のCDにはショパンのピアノ作品のほぼ全てがあるのだが、ブックレットの収録作品目録を眺めて、ショパンの多作ぶりに驚いてしまった。マズルカなどは51曲もあり、よくぞここまで似たような曲を作れるものだな、と半分呆れてしまうところだけれども、きっとショパンもシューベルトやモーツァルト、それからポール・マッカートニーのような天才肌の作曲家だったのだろう。「書いても書いても曲想が湧いて出てくる……!」というような凄みが「51」という数字から伝わってくる(実際には、マズルカは58曲あるそう)。


 しかし、強烈なのは何と言ってもピアノ協奏曲第1番。冒頭からド演歌調メロディが炸裂するのを聴くたびにのけぞってしまうのは私だけではあるまい(この部分がもっともすごいことになっているのはクリスティアン・ツィメルマンの演奏)。作品番号は11番。かなり若書きの作品で少し冗長なところがあるけれども、このメロディの力強さに「サロン音楽家」としてのショパン像は崩れ落ちてしまう。


 ここにはドヴォルザークやムソルグスキーのような国民楽派的な暑苦しさがある(その強い民族性はポロネーズやマズルカといった故郷ポーランドの舞曲形式へのこだわりからも察せられる)。この暑苦しさとサロン的な流麗さの間にある大きな隔たりが、ショパンという作曲家が持つ「マージナルなパーソナリティ」を示したものであるようにも感じられる。



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▲中国出身の若手ピアニスト、ランランによるピアノ協奏曲第1番。オーケストラ伴奏にはしっかりとした芯が通っていてかなりドイツっぽい演奏。それに対してランランのピアノは重すぎるところがあるが、なかなかの演奏である(ルバートや音量の変化などが濃い……そしてホリエモンにそっくりだ……)。


 かなりマニアックな話になってしまうけれども、私が聴いているフランソワの演奏はモンテカルロ国立歌劇場管弦楽団が伴奏を担当している。このオケからは非常にフランスの古い伝統的オーケストラの音がして興味深い。この作品では、ファゴットが目だったソロをいくつか担当しているが、そこで「明らかにこれはバソン」という音がする。




*1:フランスの古いピアニスト。Youtubeではこちらでラヴェル《左手のためのピアノ協奏曲》、グリーク《ピアノ協奏曲》などの演奏をみることができる





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