武田百合子『富士日記』

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富士日記〈下〉
富士日記〈下〉
posted with amazlet on 07.03.07
武田百合子
中央公論社 (1997/06)
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 1年ぐらいかけて下巻まで読了。武田泰淳のファンなので楽しく読めた。富士山麓にある山荘での武田夫婦の暮らしは非常に狭い枠内で閉じていて、まるで天上界での出来事のようにつづられている。その生活は非常に牧歌的で、素朴である。そこに突然、下界での様子が差し込まれるところが面白い。例えば1969年であれば学生闘争についての記述が現れるし、下巻の最後のほうにはサンタナという「70年代を感じさせる名前」が見られる。しかし、それによって山荘での生活に変化が起こることはない。そこに強く「地方」というものを感じた。


 下巻は主に泰淳が『富士』を執筆途中の日記なのだが、その執筆模様は不思議なほど書かれていない。綴られている静かな生活のなかで、あのような巨大な物語がつむがれていったのを想像するのは楽しかった。





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