スティーヴ・エリクソン『Xのアーチ』

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Xのアーチ

Xのアーチ







 スティーヴ・エリクソンの小説を読むのは3冊目だけれど、これは怪物級の作品だと思う。えげつないくらい飛びまくる小説のラインが、頭のなかを掻き回され、読みながら何度も「解説」を開いてこの先の道筋を知っておきたい……という欲望に駆られてしまった(でも、じっと我慢。そのほうがきっと楽しい、と思った)。この作品を書き終えて、作者が「もしかしたらもう小説なんて書かないかも」と漏らしたそうだけれど、そこまで想像力(あるいは幻視力、妄想力)を出し尽くしたというのもうなずける。「ピンチョンとフォークナーとガルシア=マルケスがいっぺんにやってきた!」みたいな大騒ぎである。


 小説の舞台は、18世紀の奴隷制が敷かれたアメリカと革命期のフランス、そして『北斗の拳』か『AKIRA』を思わせるような荒廃に覆われた20世紀末の「永劫都市」とドイツ。『Xのアーチ』というひとつの物語の塊は、途中で大きく4つへとコナゴナにくだかれてしまうのだけれど、クライマックスに進むにつれてその断片が見事に塊として修復される。4つの破片が運動し、描くラインがタイトルと呼応し(『X』という文字を解体すれば、4つの『始点』を見出せるだろう)、ひとつの交わった点へと結び付けられるキチガイじみた構造も素晴らしすぎる(ピンチョンのデビュー作『V.』を二重にしたような感じにも受け取れた)。


 その接点となっているのが、一人の美しい黒人女性であり、その彼女を巡る巨大な愛の物語(それもグロテスクなほどに強烈で、運命的な愛である)だというのも泣けるし、まるで使命感を背負ったみたいにそういう物語を一貫して書き続けているエリクソンは偉いです。こうなったら全部読みますよ……、もう大好き。





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