ダンテ・アリギエーリ『神曲(天国篇)』

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神曲〈3〉天国篇 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
ダンテ アリギエーリ
集英社
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 ついに天国へと昇ったダンテ(文字通り、ヘブン状態!)が、思い焦がれるベアトリーチェの瞳を凝視してたら天球の音楽を聴いてしまったり、いろんな聖人の精霊と話して疑問に思っていたことを解決してもらったりする……という第3巻。てっきり地上に戻ってハッピーエンドかと思ったら、最後は神の愛に包まれながら、その幸福のなかでダンテは表現力を失ってしまい……というラストなのでびっくりした。作品のなかにいるダンテが表現力を失う(つまり、続きを書き続けられなくなる)と同時に、作者であるダンテも表現を止める。ここで初めて、登場人物と作者という2人のダンテは一致する。


 登場人物のダンテは迷える人であり、他の登場人物に導かれる人であるのだが、登場人物のダンテを導く他の登場人物について書いているのは作者であるダンテである。よって、2人のダンテは作中でずっと分裂していることになる。この分裂した主体意識はとても近代的に思える。


 しかし『煉獄篇』同様、『地獄篇』のようには面白く読めなかったのが残念である。話が後半に進むにつれ、話題は観念的になり(また教義についての問答が含まれるようになり)、問題は意識によって解決されてしまう。肉体的な問題(山登りがつらい……とか)はほとんど出てこない。よって、ロード・ノベルのようには読めなくなってしまうのが、要因なのか。





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