ダンテ・アリギエリ 『神曲』

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原基晶さんによる新訳のダンテ『神曲』を一気読み。感動的なお仕事であり、訳者による解説を読みながら、ひたすらこのお仕事に対するリスペクトを禁じえない。たとえば一番最初の『地獄篇』の「『地獄篇』を読む前に」で語られる「翻訳中のカタカナ表記について」の記述。「こだわり」という簡単な言葉で処理できない、訳者のパッションをギンギンに感じて本文に入る前からわたしは感動してしまっていた。旧訳に対してリスペクトを払いながら、なぜこの新訳が必要であったのかを説き、また、正しい読みはどのようなものであったのかを提示していく訳者の丁寧な仕事にはいちいち頭がさがる。極め付きは、最後の謝辞だ。この訳業自体がある意味、プロジェクトX的なものとして伝わってくる。

『神曲』を読んだのはこれが初めてではなかった。集英社から出ている寿岳文章訳は7年ぐらい前に読んでいて(地獄篇煉獄篇天国篇のそれぞれの感想記事)今回は再訪ということになるわけだけれども、7年のあいだにかなり読者としての立場が変わっているせいか、ずいぶん「読める」という感覚が大きくなった。以前に読んだときはあまり楽しめなかった煉獄篇や天国篇も、ダンテが生きていた時代に支配的だったアリストテレス主義的な自然学を読みかじっていたおかげで読める感じがするし、最後の最後にダンテを神の前に案内してくれるベルナールの名前も井筒俊彦の本でこないだ読んだばかりだ。

こうして少し読めるようになってみると、『神曲』の哲学的/神学的な内容への驚きは増した。ここには14世紀初頭の知識人が理想とするコスモロジー、また、神学論争・宗教的な道徳論争が反映されている。そして、単なる叙事詩ではなく、哲学書としての性格がすごくわかってくる。もちろん、その思想的な背景とテクストとの結びつきを、テクストそのものから類推できるほどの知識は持っていない。結びつきを助けてくれるのは、訳者による注だ(この注によるアシストなしでは、読める自信まったくなし。そもそもダンテの時代にも、注とともにテクストを読むのは一般的な読みの行為であったという。これも本書で知った)。

これだけ丁寧なアシストがあれば、このテクストは、このテクストが書かれた当時の知的世界への入り口、あるいはその先の世界に踏み入っていくための地図として利用することもできると思う。

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