最近はちょっと多忙で、ホント夏休みが取れるかどうか危ういって状況だったんだけど(無事予定通り今日から夏休みになりました)、そんななか合間を見つけて読んでいたこの本がキラキラと輝く希望みたいに感じられた。久しぶりにガルシア=マルケスの作品に触れたが、やはりラテンアメリカの作家のなかでも別格的に面白いと唸ってしまう。いやあ、本当にすごい想像力だ。カリブ海に浮かぶ仮想の島国が舞台に、怪物じみたその国の独裁者である「大統領」の一生を描きながら、妄想と幻想が炸裂。『百年の孤独』でノーベル文学賞を取った作家が、こんなバカ描写を書いてて良いのか、って思った。「男色が止められないことに悩んだ軍人が、ケツの穴にダイナマイトをぶち込んで爆死」とかいう描写も満載で最高。このあたりはラブレーとかセルバンテスとかの奇想が現代化されたみたいである。
ただし、もちろんそういうバカ描写だけが面白いわけではない。強烈な物語性みたいなものをものすごく感じてしまった。大統領と、その母親であるベンディシオン・アルバラードの関係性は素晴らしい。とにかくむちゃくちゃなことをやり続ける大統領を、すっぽりと包み込む母性の大きさがかなりの勢いで神話クラス。このモチーフは、おそらく中上健次やスティーヴ・エリクソンにも継承されている……と思う。
私が読んだのは、現在普通に本屋さんにおいてある新潮社版ではなくて、昔の集英社版。これには翻訳者の鼓直大先生の文章も2つ収録されている(新潮社版にもついてるのかな?)。ひとつはガルシア=マルケスの略歴と、作品の解説。それからもうひとつは1960年代以降のラテンアメリカ文学の潮流について書かれたもの。どちらもとても面白く大変勉強になった。作家の写真もたくさんあって、ガルシア=マルケスとカルロス・フエンテス(メキシコ)のマンダム感がすごい。超ダンディ。
ノーベル賞作家マルケス氏、「ジャーナリストほどすばらしい職業はない」 国際ニュース : AFPBB News
ガルシア=マルケスの今を伝えるニュース記事(写真は2007年のもの。老けたなぁ)。年内に新作を書き上げる(!)とか。日本語で読めるまでにどれぐらいの時間がかかるかわからないけど、楽しみだなぁ、って思う。
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