稲葉振一郎『経済学という教養 増補』

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経済学という教養 増補 (ちくま文庫 い 66-1)
稲葉 振一郎
筑摩書房
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 この本の筆者について「はてなで日記を書いている、なんか怖い感じの論客」というまったく意味のない認識しかなかったのだが「こんなにタメになる物を書く人だったのか!」と思いを新たにするぐらいの良書。現代日本経済についての議論の見取り図であり、数式を一切使わない経済学理論の入門書であり、さらに「マルクスおよびマルクス主義って結局なんだったのか?」というまとめも行うとんでもない「教養本」である。現在『資本論』を読破しようとしているところだったのでマルクス関連の記述はとても役に立った気がするし、また、フランクフルト学派のどんな部分にマルクスの影響があったのかも分かった気がしたのも良かった。結構ヴォリュームがある本なので、折を見て読み返そうと思う。


 第一章「こういう人は、この本を読んで下さい」からして最高。ここでは経済学が専門ではない筆者が何故経済学の本を書こうと思い立ったのか、それから、この本を読む意義とは何かについて書かれているのだが、この書き方がなんとも「経済学も勉強しておかないと、ヤバいよ?結構」という不安を煽ってくる感じで良い。特に思想・哲学系の本ばかり読んでて「経済学ぅ?興味ないね!(だって思想・哲学のほうが崇高じゃんかー)」みたいな人の胸にザックリ来る感じではなかろうか。


 近年、論壇における重要キーワードとして「公共性の失墜」というものがある(本当は論壇なんか良く知らないけれど……)。誰もが共有している基盤みたいなもの(公共性)が失われてること、その象徴としての格差社会――このヤバさについては、宮台真司や東浩紀が繰り返している通りだけれど、彼らの危惧感は稲葉振一郎にも共有されている――一生懸命思想・哲学の本を読んでいて、東浩紀の言っていることにイチイチ頷いてるくせに経済学についてはまったく知らないって態度は、世の中にまったくアクセスできない領域を残してしまうことだ。それは「公共性の失墜!ヤバい!!」とか言っている人のなかに同様の失墜が見受けられる事態なんじゃないか、みたいな。


 あと「経済学って社会の合理的な部分だけに焦点を当ててるわけじゃないんだな」って思わされたのも個人的には大きかった。学生時代にもっとこういう本と出会っておきたかったかもしれない。





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