紗矢香、お前は美しい……けど

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チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
庄司紗矢香
ユニバーサル ミュージック クラシック (2007-09-05)
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 所用でこの3連休は実家に帰ってきているのだが、用事が済むととくにすることもないので実家でビールを飲みながらテレビばかり観ている。大相撲とか(優勝決定戦、久しぶりに熱い一番だったなぁ……モンゴル人力士のガチファイトってなんであんなに面白いんだろう……)。実家には大きな液晶テレビがあって、これでテレビを観るのは結構楽しい。BSも入るので、映画もクラシック番組もたくさん観れる。それでさっきはヴァイオリンの庄司紗矢香によるチャイコフスキーの協奏曲を聴いていた。オーケストラはサンクトペテルブルク響、指揮はユーリ・テミルカーノフ(しばらくぶりにこの人の顔を見たが、なんか老け込んでて誰かわからなかった。あと黒田恭一も老けたなぁ……あれじゃタダの偏屈なジジイだよ……)。


 ちょうどこの演奏(今月の7日)は生中継をFM放送で聴いていたのだが、とにかくどっしりした安定感ある演奏で、まだ25歳だって言うのにほとんど巨匠みたいな演奏ですごかった。映像で観ると、ホントにヴァイオリンがヴィオラに見えちゃうぐらい小柄な体格なのに、どうしてあんな演奏ができるのか本当に不思議だ(それから、最近またちょっと綺麗になったよね……)。彼女の先生はダヴィッド・オイストラフの弟子だったザハール・ブロンということもあり、彼女の演奏に「オイストラフの若い頃ってこんなだったんじゃなかろうか」と今は亡きソ連の巨匠の幻影みたいなものを見てしまうほどである。豊かな音色と、書かれた楽譜のなかにある遊びの部分を目一杯使った自由なルバートの感覚は、とても健康的だ。


 とはいえ、ずっとこういう演奏を続けられるのも心配な気もする。庄司紗矢香、あまりにも健康的で、あまりにも正統派で、あまりにも真面目で、素晴らしい演奏過ぎるのだ。そこにはブレがほとんど感じられない。ここにはたぶん庄司紗矢香という演奏家の慎重さもあると思う。パガニーニ国際コンクールで優勝し、国際的なデビューを果たしてからもう10年近くの歳月が経とうとしているのに、まだ、彼女が発表している録音は4枚しかない。もちろん、演奏会で弾くレパートリーには、もっともっと多くの作品が加えられている――そして、その演奏は素晴らしい。でも、録音はしない。マジで自分が納得いく形になるまで録音はしない、そういうポリシーを持って活動をしているんじゃないか、と思う。想像だけど。だから、彼女の演奏はブレがない。熟慮と訓練によって、ブレは極限まで削ぎ落とされている。


 けれども、そこからは「狂い」もまた失われてしまう。だから、ゾクゾクくるような、理解を超えたような演奏は聴けないのではないか、と心配になる。嫌な言い方をすると「このままじゃ、天才的に良く出来た優等生で終わってしまうんじゃないか」と。彼女が出演する演奏会に行ったら、とても満足して会場を後に出来ると思う。それもかなりの高確率で。「あー、良かったねぇ……」とニコニコしながら帰りの電車に乗ったりできるだろう。でも、びっくりはしないんじゃないかな、という想像もできる。「うわー……なんかすごいもの聴いちゃったよ……」とはならなそうである。そして、こういう期待感がないとなかなかチケットを取って生で演奏を聴きたい、という風にはならなくなってしまう(とくに郊外に住んでいたりすると)。


 なんだかものすごく贅沢なファンのワガママを書き連ねてしまったが、来年の1月に来日ツアーをするそうなのでこれは聴きに行っておきたい。結局、行くのだ(好きだから)。来年は年始からサントリー・ホールで(追記;鎌倉芸術館にしました)紗矢香タン、ハァハァするぞ!





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