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ニコラ・ベネデッティのヴィジュアル革命



Nicola Benedetti - The Lark Ascending - YouTube

 若手女性ヴァイオリン奏者、ニコラ・ベネデッティが最近気になっている。1987年生まれ、現在弱冠21歳にしてジョン・タヴナー*1の作品に取り組むなど新人離れした選曲センス(デビューはシマノフスキの協奏曲。そんな新人いたか?)と言い、安定感のある演奏力と言い、ここ最近男性ヴァイオリン奏者にパッとした人がいない(気がする)せいもあり、存在感が大きい。


 あと、やっぱりヴィジュアルがこの人はすごい。セレビッチ顔っつーの?割と地味顔が多いクラシック界において、この華やかさは異色である。冒頭にあげたのは、ヴォーン=ウィリアムズの《あげひばり》のPV。クラシックでPVが製作されているのも異例だと思われる。



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 こちらは来日時(2006年)の、ラヴェル《ツィガーヌ》。胸元が大きく開いたドレスが、演奏をより煽情的に響かせる。素晴らしいおっぱいだ……。このとき、まだ10代かよ……。



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 さらに2004年のシマノフスキ。顔は今と比べるとちょっと垢抜けていない感じがするが、演奏は堂々たるもの――というか、かなりの名演だ。なぜ、彼女がこんなマニアックな作品に取り組んだのか大きな謎が残るが、おそらく彼女が演奏していなかったなら聴く機会がなかったという人も多いだろう……ということで良い仕事。さすがにヒラリー・ハーンのような衝撃、とまではいかないが、地に足が着いた演奏にはどれも好感が持てる(メンデルスゾーンの演奏も、奇をてらうところのない正統派、という感じで良かった)。いずれにせよ、まだまだこれからの演奏家なので今後、どういう成長を遂げるのか楽しみだ。



Nicola Benedetti Plays Szymanowski, Chausson, Saint-Saëns

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Nicola Benedetti plays Mendelssohn, MacMillan & Mozart

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Nicola Benedetti Plays Vaughan Williams and Tavener

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*1:ビョークとも競作があるイギリスの現代音楽家





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