エルヴィン・パノフスキー『ゴシック建築とスコラ学』

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ゴシック建築とスコラ学 (ちくま学芸文庫)
アーウィン パノフスキー
筑摩書房
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 今年に入ってからパノフスキーの本をよく読んでいます(見つけたら即購入するスタンス)。初めて彼の名前を目にした人向けにその業績をむちゃくちゃ簡単に書いておきますが、彼は「イコノロジー(図像解釈学)」を創始した大変博識なおじさんです。で、このイコノロジーってなんなの? と言いますと「美術作品の構造のなかから、細部に宿っている理念や文化史的コンテキストを発見する行為」ということになります。詳しくは彼の代表作である『イコノロジー研究』*1の冒頭にありますので気になった方はそちらをご参照ください。で、本日読み終えた『ゴシック建築とスコラ学』という論文も、そのタイトルどおりイコノロジーの実践によって、ゴシック建築のなかにスコラ学の理念を見出さん、というものでした。超面白かったです。





 スコラ学って何ですか? というレベルの人でも安心。「私もスコラ学って何ですか?」という感じだったのですが、冒頭はスコラ学の起こりから盛り上がるまでの史的な流れの解説が入ります。だいたいどういう感じだったかっつーと、スコラ学以前の神学だの哲学だのっていうのは、体系っていうものが明確じゃなかったんですね。で、スコラ学の人たちっていうのは「やっぱ、そういうの明確にしてかなきゃいけないズラ!」とか言って、せっせと体系だった学問の形式を作ろうとしたわけです。





 なんで彼らがそういう風に「なぁ、俺たち付き合ってんのかな?」というような曖昧さにもどかしい思いを抱える若い男女のようなことを始めたかっつーと「そういう風に秩序立ててやってかないと、信仰だの神様だのがはっきりしないズラ!」と思ったからだ、というのがパノフスキー先生のお見立てです。彼はこういったスコラ学の原理を「明瞭化のための明瞭化という基本原理」と名づけています。つまり「神様だの信仰だのを明瞭化するために、明瞭に物事を考えよう」という原理がこれです。こういう原理が近代理性の原点になってるのだ、とパノフスキーは言ってますが、このあたりが個人的なツボでした。





 そしてゴシック建築にも似たような流れがあったのです。後半は、実際に建築の構造を見ていきながら、どんどんと建物が明瞭化していく過程を追う、という感じになっています。この変化はどうにも偶然ではないだろう。おそらく、当時の建築家たちはスコラ学の影響を多大に受けていたのではないか……というのが論文の結論になります。二〇〇ページ強の本なのですが、半分以上は註と図録なのでサクッと読める。内容としてもそんなに難しくないので、パノフスキー入門にもちょうど良いかもしれません。






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