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最近、やっぱりこれはすごいなぁ、と思ったCDについて




Explorations
Explorations
posted with amazlet at 09.10.26
Bill Evans Trio Scott LaFaro
Riverside/OJC (1991-07-01)
売り上げランキング: 1468



 二ヶ月ぐらい仕事が暇で、ほぼ毎日定時に帰っているため(残業代がつかず)大変苦しい生活をしております――と別に報告する必要がまったくない事柄から書き出しましたが、そういうわけで欲しいCDなどがあっても血尿が出るぐらいまで思慮を重ねたあげく「これは今買っておかなきゃダメだ!」というものしか買っていません。新しいCDを買わなくなった代わりに家にある、いわゆる「名盤」を聴きかえしたりして過ごしています。これはこれで新しい発見があって良い。ビル・エヴァンスの「リバーサイド四部作」なんか聴き直しちゃったりして『Explorations』すげー、とか一人で騒いでいます。




 このアルバムって「四部作」のほかの三枚*1と比べると、ずっとケレン味がない。だからこそ、四枚のなかで最も地味な位置づけになっているんだと思うんですが。じっくり腰を据えて、神経すり減らすぐらい集中して聴かないと、すっと通り過ぎて終わってしまいそうなぐらい。「枯葉」とか「いつか王子様が」とか超有名なスタンダードを演奏してるわけじゃないし。でも、逆に集中して聴くと、この演奏の鋭さみたいなのが、グサッとくる。やべぇ、ポール・モチアン、超クール、みたいな。



サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番/第5番
チョン・キョンファ
ユニバーサル ミュージック クラシック (2001-04-25)
売り上げランキング: 29896



 あと、チョン・キョンファが二〇代後半のときに録音したカミーユ・サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第三番もすごかったです(これは買ってから二、三回しか聴いてなかった)。魂に火がつきそうなぐらい温度が高い演奏、っつーか、このボウイングの擦過音を聴いてると弓の毛からホントに火がでててもおかしくないんじゃねーか、と思わなくもない。カッコ良いです。





 あと、曲も良い。円熟期のサン=サーンスの巧みさに唸らされる、というか。この人は一九世紀の半ばから二〇世紀の初頭まで活躍してたフランスの作曲家なんだけれども、一九世紀後半のフランス音楽界には完全にドイツ音楽に圧倒されてたところがあったらしくて、サン=サーンスも「俺らもボヤボヤしてっと置いてかれちまうYO!」とか危機感抱いて、仲間の作曲家と徒党を組んで、ドイツの重厚な交響音楽の要素を取り入れたフランス音楽を作ろうと頑張ってたんですね。





 ちなみに徒党を組んで作ったのが「フランス国民音楽協会」っていう団体。めっちゃ愛国心感じるネーミングなんだけど、内情は「ベートーヴェンってやっぱすげーよねー」とか言ってるんだから、なんか倒錯を感じなくもない。話が大幅にズレたけど、サン=サーンスの場合、このドイツの古典音楽への傾倒っていうのが結構あからさまで、すごく構成美を感じさせつつも、超洒脱なところが良い。





 それから、キリル・コンドラシンが死ぬ直前に指揮したグスタフ・マーラーの交響曲第一番≪巨人≫のライヴ録音も聴き直しました。コンドラシンというのはソ連の巨匠指揮者なんですが、このコンサートの夜に急死しちゃう正真正銘のラスト・レコーディング。しかも、そのコンサートっていうのが別な指揮者の代役でリハを一時間しかやってない、っつー色んな意味で貴重な記録なんだけど、なんか異様な緊張感があって冷や汗が出そうになる。オケの音もなんかむちゃくちゃ本気モード。本気すぎてアンサンブルがひどいことになってる(第四楽章のヴァイオリンが大変そうな箇所とか爆笑モノ)。でも、すごい。演奏の精度を無視したところで、極めて純度の高い音楽が成立している。





 オーケストラは、北ドイツ放送交響楽団。この日、本当はクラウス・テンシュテットという人が振るはずだったのが、当時オケと指揮者の仲が悪かったらしくて、ほとんど仮病みたいな感じで指揮者がドタキャンしちゃったんだって。コンドラシンに代役が回ってきたのは、ホントに偶然。以下、想像ですがこのときのオケの異様なテンションの高さって「ここでヘタこいたら、マジでカッコ悪りぃ……」っていう意地があったからなんじゃないかな、って思う。もっと言うとテンシュテットに対してブチ切れている。コンドラシンもたまたま振ってみたら「なんか超テンションたけーなっ!」ってビックリしてたんじゃなかろーか。こうなったらもう祭りだよね。廃盤になっているのが大変残念。






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