冨永愛
ディスカヴァー・トゥエンティワン
売り上げランキング: 3,524
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全員父親が違う3姉妹の次女、貧しい母子家庭で育ち、コンプレックスだった高身長を生かしてモデルとして成功する。そして、結婚、出産、離婚。気がつくと自分も折り合いの悪かった母親と同じように、子供に不幸な思いをさせている、という気づきから、彼女の物語は「家庭」を手にいれるモードへと移り変わる。闘争的な生き方からの再生、というか、そのプロセスでは立て続けに、母親や、記憶から抹消されていた父親との和解があったりする。「愛なんて 大っ嫌い」と言いながら、後半はほとんど「愛をとりもどせ!!」と言っても良いだろう(YouはShock!)。
ただ「そういう物語って、よくありますよね、」という感じであって、特段の新鮮味も驚きもない。17歳で渡米し、ファッション業界の最前線に飛び込んでからの、偏見やギョーカイ人への嫌悪といったところは、かなりあけすけに書かれていて、まあまあ面白くはある。ブランドの実名が出てきたりして。ただ、そこでも暴露本的な展開はないから、読み物としては中途半端な印象だ。どうして自分が成功できたのか、についても触れられることなく、そこでおこなった努力を振り返るわけでもない。多くの読者は「なんでこの人はトップ・モデルになれたの?」と疑問に思うんじゃないか。
言葉もできず、態度もでかいアジアの女子高生がどうして評価されたのか。本書では詳細に語られていないこの点を考えたくもなる。ファッション業界に憧れていたわけでもない(彼女は、カール・ラガーフェルドの名前も知らなかった、と告白している)のに、モデル活動ができた理由には、コンプレックスからくる権力への意志があるだろう。でも、それだけでは、成功にはつながらなかったはずだ。
よっぽどの天性が彼女にはあったのか。もちろん、それもあるのだろう。高校の制服を着た彼女の写真が『VOGUE』に掲載されたことが、世界デビューのきっかけとなったという有名なエピソードは、本書でも触れられている。冨永の成功には「女子高生」という便利な言葉で言うと「クール・ジャパン」的に受容されたものが大きかったのでは、と個人的には思った。それは「アジアから来たミステリアスなクール・ビューティー」という典型的なエキゾティックな感覚へと落とし込まれていったように思うのだが。
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