柔らかい、夜の音楽

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ズート!
ズート!
posted with amazlet on 07.01.30
ズート・シムズ ニック・トラヴィス ジョージ・ハンディ ウィルバー・ウエア オシー・ジョンソン
ビクターエンタテインメント (2005/06/22)
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 友人がズート・シムズのYoutube動画をブクマしていたので、久しぶりに彼のアルバムを聴き直していた。サックス奏者としては同時期に活躍していたスタン・ゲッツよりも地味な存在だけれど、Youtubeには彼を映した動画が結構ある



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 ズート・シムズがその四角い顔を膨らませながら吹くテナー・サックスの音色は、とても柔らかく、優しい。聴いていて「ああ、こういうものが『夜の音楽』に相応しいのだな」と思う。言葉をかけるわけではないのだけれど、隣に寄り添ってくれるような安心感がある。「寡黙なお父さん」を演じているときの小林稔侍みたいだな、と個人的には感じる。もっとも、最初からそれほど渋いプレーヤーだったわけではなく、若い頃のズート・シムズはもっとちょっと溌剌として豪快なプレイで魅了してくれる(ただ、決して『喋りすぎる』ことはない)。その配分が実に趣味が良く、ベニー・グッドマンやスタン・ケントンに寵愛されていたのも分かる気がする。


 映像は1984年の「風と共に去りぬ」。彼は1985年に亡くなっているので最晩年の記録だ。彼が亡くなる直前の様子はビル・クロウの記した『さよならバードランド』に詳しい。



ズートはとても演奏できるような状態ではなかった。なんとか必要とされるだけの力をズートに与えてやりたいと僕らが祈りながら、哀しげな面持ちで見守っている前で、彼がマウスピースにリードとリガチャーを装着するのに5分くらい時間がかかった。ようやくそれが終わり、口をあてて吹いてみると、そこから出てきたのは弱々しいかすれた音だけだった。その古いセルマーは長い年月にわたって彼の美しい声そのものであったというのに。



 病魔は容赦なくズートから「美しい声」を奪ってしまう。この記述は、とても残酷で、思わず泣けちゃうんだけど、そんななかでも音楽をしようとするミュージシャンの態度が美しい。



さよならバードランド―あるジャズ・ミュージシャンの回想
ビル・クロウ Bill Crow 村上春樹
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