ドイツ・シャルプラッテンの個性と発展

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 id:HODGEさんが紹介していた、徳間ジャパン(今はキングレコード?)のプロデューサーで、東独(!)の国営レコード会社、ドイツ・シャルプラッテンの担当をしていた人のインタビュー記事がとても面白かった。このレーベルのCD、ちょっと前は少し手に入れにくかったんだけれども、最近になってまた再発されるようになったらしい。何年か前の再発では、すべてCCCD仕様になっていたのがとても萎えたけれど、今回は普通のCDなんだろうか……?高校の頃、学校近くのデパートでバーゲンセールがあって「これ何年からお店にあるCDなんだろうなぁ……」と思いつつ、このレーベルのCDを買い漁ったことがあったので、個人的に思い出深いレーベルである。


 記事は結構ヴォリュームがあって、そのなかでもオットマール・スウィトナー(渋いなぁ……)のドヴォルザーク全集にまつわる話がおもしろかった。



彼は僕にこう言ったんですよ。‥‥《新世界より》とか8番だけではなく、私はどうしても全曲やりたい。今まで数々ある名演、特にチェコ系の演奏はたいへん素晴らしい。ただ、彼らがチェコ人であるゆえなのか、悪いわけではないけれどボヘミア風にやりすぎではないかと。ドヴォルザークはベートーヴェンやブラームスにつぐ絶対音楽として書いたのであって、明らかにボヘミア風の民族色豊かな交響曲を作ろうとしたのではなかったのではない。楽譜を読んでいくうちにその思いを強くしたので、交響曲を録音するなら全曲やるのがすごく重要だ、ドイツの作曲家の流れの中に位置づけられる絶対音楽であるということを、もう一度皆に感じてほしい、と力説したんです。



 ドヴォルザークの《新世界より》、第8番はアマチュアのオケの定番曲となるぐらい人気がある曲だが、クラシックの聴き方が玄人染みてくると(リスナーに素人も玄人ないんだけど……)どうにも敬遠しがちになってくる。一方で、第8番より前の交響曲は「胃がもたれそうな、土臭さ」みたいが希薄で、音楽的にも面白い――特に第6番なんかは「正気に返ったシューマン」とでも呼べそうなメロディの豊かさと構造美の均整が魅力的な傑作だ。スウィトナーのドヴォルザーク解釈は、この第6番のポイントから全体を俯瞰しているように思う。彼の第6番はスマートかつ抑揚に満ちた名演で、その後の交響曲もそのスタイルを引き継ぎながら演奏している。こんな風にドヴォルザークを捉えられたのは、彼ぐらいだったかもしれない。地味だけど、とても良い仕事。



ドヴォルザーク:交響曲第6番
スウィトナー(オトマール) ドヴォルザーク シュターツカペレ・ベルリン
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 インタビュー記事では触れられていないが、このレーベルで言うとヘルベルト・ケーゲルという指揮者についても忘れられない――ベルリンの壁崩壊とともに、拳銃によって自らの命を絶った、というエピソードだけでもものすごく強烈なのだが、演奏はそれ以上に強烈だった。「共産圏で活動していたから……」というわけではないだろうけれど、共産主義がらみの作曲家の作品をあげたときの凄まじさは特に印象深い。ドミトリ・ショスタコーヴィチ(ソ連)の交響曲第5番で勝手に付け加えた「鐘」の轟音であるとか、ルイジ・ノーノ(イタリア。イタリア共産党の革命闘士!)の《力と光の波のように》でソプラのが絶叫するシュプレヒシュテンメのブチ切れ方であるとか、本場のムラヴィンスキーやダルムシュタットの同士であったブーレーズの演奏より「ホンモノ」らしく聞こえるのだ。ケーゲルの演奏には「何もそこまでやらなくても……」と言いたくなるところがあるけれど、誇大妄想的な解釈によって作品の深遠をもう一段掘り下げた離れ業は評価されても良いと思う。こういう指揮者が東西ドイツ統一後にポストを失ったことを悲観して自殺した、というのは悲劇的である。



ノーノ:力と光の波のように
ライプツィヒ放送合唱団 ラインハルト=キス(ウルスラ) トレクスラー(ロスヴィータ) ハーゼロイ(ウェルナー) ラ・リカータ(ジュゼッペ) ケーゲル(ヘルベルト) ノーノ ノイマン(ホルスト) ライプツィヒ放送交響楽団
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 ドイツ・シャルプラッテンが残した録音には個性的なものが多い。そこには西と東という言語の違いさえ感じられるような気さえする――そういう違いに触れると、冷戦構造が世界からほぼ消え去ってからやってきたグローバリゼーションの波が、クラシック演奏の世界にもやってきているんだな、とか思う。いろんな国に高いレベルのオーケストラがあるのは喜ばしいけれど、どれもベルリン・フィルを目指しているように聞こえるのは寂しい。





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