アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ『狼の太陽』

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狼の太陽―マンディアルグ短編集 (白水Uブックス)
アンドレ・ピエール・ド マンディアルグ
白水社
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 生田耕作の訳文が妙に恋しくなってフランスの作家、アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグの短編集『狼の太陽』を読む。「狼の太陽」とは何か、本の冒頭には「狼たちの太陽――月」と書かれている――月は何を示しているのか、それは「狂気」だ、ってわけで狂気が目一杯に詰まった怪奇的幻想小説だった。幻想小説の類は、結構苦手とする分野なんだけれども、これは「悪夢度」がハンパではなくて(正直言ってボルヘスよりもすごいと思った)ドキドキしながら読まされてしまった。生田耕作の訳文も素晴らしい。日本語でこれだけ禍々しい感じが出るのであれば、原文はどういう風なんだろう、と興味を持たせてくれるような名訳である。不健康で美しい日本語が全篇に渡って展開されるところには、思わず感動してしまった。


 収録されている6つの短編のなかでは、最後に載せられた『生首』(なんてタイトルだよ……)が一番恐ろしい。話は森の中に住む狂女が物語の語り手に「自分がなぜこんな風に狂ってしまったのか」を語るというものなんだけど、その原因となった悪夢のような情景描写がホントに怖いんだよ……。今までそれなりに色んな本を読んできたと思うけど、この『生首』が一番怖かった!ってぐらいに。これは寝る前にベッドのなかで読んでは絶対読んでいけないと思った。なぜなら自分がベッドのなかで読んでいて死ぬほど恐ろしい気持ちになったから……。寝る前に読んだらトイレになかなか行けなくなったり、「と、戸締りしたっけ?」とか心配になったりすること請け合い。



人間の小粒というよりは、犬か、猿か、それとも小熊に近い子供たちが、浜砂利の上で遊んでいる。八人の男の子が四本の古いゴム管の口にそれぞれ小さな性器を差し込んで、四つの組に結ばれ、この弾力性のある縄を使って、女の子に挑みかかるのだった……



 かといってマンディアルグが真性の変態ホラー作家なのか、と言えばそういうわけでもなくて、唐突に上に引用したような「なんだかよくわかんないけど面白いな(ほっこり)」描写もたくさんあるので面白い。白水uブックスからは他にもこの作家の翻訳が出ているので読んでみよう。





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