ピエール=ロラン・エマール『メシアンへのオマージュ』

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メシアンへのオマージュ
エマール(ピエール=ロラン)
ユニバーサル ミュージック クラシック (2008-07-09)
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 先日の来日公演でも素晴らしい演奏を聴かせてくれたピエール=ロラン・エマール*1のメシアン作品集を聴いた。バッハがメインとなった今回の来日では、バッハ、そしてそれ以上にベートーヴェンの演奏が素晴らしかったので正直言ってメシアン作品についての印象があまり残っていないのだが、この録音を聴きかえしているうちにエマールが弾くメシアンのすごさが分かってきた気がする。


 エマールが弾くメシアンはとても自然なのである。そこで描かれる作曲家の姿は「鳥と戯れる神秘主義的カトリック信者」でも「音楽によって星を、宇宙を描こうとした誇大妄想家」ではない。演奏を聴いているとあくまで「独創的な形式を探求した20世紀の作曲家」としてメシアンを捉え、アプローチを行っているように思えてくる――これは音楽史上の作曲家たちの連なりに、メシアンを載せなおそう、という試みであるように思う。だからエマールの演奏には過剰なフォルテッシモや瞑想するかのような遅いテンポの選択は必要ではなくなる。


 それが顕著なのは、メシアンの初期作品である《8つの前奏曲》だろう。印象派や(おそらく)パリ時代のストラヴィンスキーの影響が窺い知れる楽曲に、メシアンが過去の作曲から引き継いできた「伝統」が浮かび上がるかのようだ。ルバートやタッチの息遣いは、まるで後期ロマン派の作品のように楽曲を聴こえさせる――エキセントリックな部分などひとつもない。そして、聴こえてくる伝統に紛れて「その後のメシアン」の響きを感じさせるものも登場してくる。この部分が本当に素晴らしい。エマールといえばまず「完璧なテクニック」について語られるが、それは単なる「道具」に過ぎず、エマールの演奏が「なにか」については、この解釈力/咀嚼力にあると思う。


 とはいえ、やはり素晴らしいテクニックが聴けるのも楽しい。《8つの前奏曲》の第8曲や、《4つのリズムのエチュード》から抜粋された「火の島I」、「火の島II」は思わずのけぞるような圧巻の演奏である。特に「火の島」シリーズにおけるポリリズムのすごさと言ったら、内臓がもだえるようなダンサブルな快楽である。






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