藤岡淳子 『性暴力の理解と治療教育』

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性暴力の理解と治療教育
性暴力の理解と治療教育
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藤岡 淳子
誠信書房
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臨床心理士として性犯罪者の治療教育にあたってきた著者による研究書を読む。「強姦は性欲という本能の過剰(あるいは抑圧)によって引き起こされるものではない」という分析は、牧野雅子による『刑事司法とジェンダー』と共有されている。記述は平明でわかりやすく、現場感覚が伝わってくるようで大変興味深く読んだ。レベル的には、専門外の人にも読める専門書、といったところ。

性犯罪者の心理の分析において本書では「犯罪の達成による自己評価の向上」という側面が語られる。これは恐ろしい世界だ。ただ、これは性犯罪というカテゴリーに限定した物言いでもないだろう。たとえば、常習的な万引き犯が「スリルを求めて犯行を重ねる」と いうようなことはよく語られる。しかし、これは外から与えられたストーリーでしかなく、本当はスリルの先にある「達成感」にフォーカスされるべきなのかも、とも思う。ドキドキが楽しいのではなく、ドキドキが終わったあとの解放を犯罪者は求めるのだ、と。しかし、盗みを働くことによって達成感を得ていた、盗みを働くことで(本来は悪いことなのに)自分の評価が高まった、というようなことは犯行をおこなった人物にとって「スリルを求めて」よりも告白しがたいものなのではないか。

本書の後半は、事例紹介も含めて、治療教育のプロセス・技法について語られている。治療というと、外部(治療者)からアクションを 与えるだけで治す、ようなイメージをしがちだが、ちょっと違っていた。細菌に対して、抗生物質で対処する、みたいな。けれども、本書が語るのは、治療者のアクションによって、悪しき欲望をコントロールするための抵抗力を被治療者に持たせるイメージに近い。それを強制的に被治療者に与えることはできないし、被治療者が犯罪なしでもやっていけるようになりたい、と思わなければ、治療は効果がない。治療者には「なりたい」と思わせる手助けぐらいしかできない、ところに治療の難しさを感じるのだった。むしろ、これは教育の難しさ、であるのかもしれないけれど。

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