スウェーデンの悲劇的作曲家(の歌曲)

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Allan Pettersson: Complete Songs
Gustaf Allan Pettersson Monica Groop Cord Garben
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 ドイツ、フランス、イタリアといったクラシック音楽の中心地から距離的に離れているせいなのか北欧には、変わった音楽家が多い。それは現代でもそうで、特にフィンランドは畸形的なロックを奏でるバンドがたくさんいて結構面白い。フィンランドと言えば、ジャン・シベリウスという作曲家がいるけれども、そのシベリウスの名前を冠した「シベリウス・アカデミー」という音楽学校からポンポンとそういう変な音楽をやろうとする人が出てくるのは、もはや文化的風土として「おかしな音楽をやろう」という姿勢があるとしか思えない。





 まぁ「北欧」と言ってしまうと随分大雑把な分類だけれど、フィンランドにも変わった作曲家がいる。ギュスターヴ・アラン・ペッテション。1911年、グスタフ・マーラーが死んだ年にストックホルムで生まれた20世紀最大の「悲劇的」作曲家の一人だ。ペッテションは一曲も「悲劇」など書いていないのに「悲劇的」なのは、「悲劇的な生涯を送った」、ということにある。生まれからして貧民街で、アル中の父親の暴力の下で育ち、敬虔なキリスト教徒だった母親が歌う賛美歌で音楽に目覚めた、というエピソードだけでも結構涙ぐましい話なんだけれど、彼の不幸ストーリーはそれだけで終わらない。苦労して音楽院を卒業し、作曲活動をしながらオーケストラのヴィオラ奏者として働きはじめ、念願の音楽家になる夢を掴んだのも束の間、原因不明の関節炎で彼は楽器が弾けなくなってしまう。「まぁ、俺には作曲もあるからな」と作曲に専念すると関節炎はどんどん悪化して、ペンも持てない状態に。最後には癌に見舞われて、1980年に死んでしまう。これを「悲劇」と言わずして何と言おうか、という感じだ。


 


 しかし暴力、貧困、病、つぎつぎと襲う不幸のなかで、17曲も交響曲を書いているのだから、ペッテションという作曲家はなかなか立派な仕事をした、とも言える。けれど、どれもものすごく暗い。ほとんどの作品が一楽章で構成されていて、しかもどれも長い(平気で40分を超える)。特徴的なのはオスティナートが執拗に反復ところ。調性感も希薄。ドロドロと巨大な音の群れが運動している様子は、ペッテションの内面そのものなのかもしれない。「人間の暗黒面」というか。まぁ、気が滅入る曲なんだけれど、ときどきその黒い雲みたいなものが晴れる瞬間があって、そこがものすごく美しい。分かり易いけれど、「救われる」というか。延々とムチを打たれた後に貰う飴っつーか、そういうのは割と肉体的な音楽な気がするけれど、こういうのも私は結構好きだ。代表作の交響曲第7番と第8番のCDを時々聴き返す。





 今日、中古盤屋を物色していたら投げ売られていたのが、ペッテションの歌曲全集。全集と言っても24曲の歌曲集《裸足の歌》(1943-1945)と《6つの歌》(1935)という作品しかないので、CD一枚。「どんだけ暗いのだろう…」と期待して買ったのだが、案外普通で拍子抜けしてしまった。でも聴き続けてみたら単純に「良い曲だなぁ」と思った。作曲年を見ても分かるように、当時既に12音音楽や無調という流れは起こっていたはずだけれど、そんなの全然関係ない感じで叙情的なメロディが歌われている。シベリウスのように「フィンランドの自然」といった具体的なイメージを喚起させるわけではないけれど、ほの暗く、そして冷たい美しさがあって魅力的だ(《裸足の歌》はシューベルトが意識されているんだろうか)。ピアノの伴奏は簡素だけれど、和声などには印象派の影響も感じられる。病気の痛みと闘いながら交響曲を書いていた頃とは別人のようなペッテションの姿を見たような感じ。





 「美しくて分かり易いから、ペッテション入門に良いですよ」とは薦められないけれど(最も評価されている時期のペッテション作品とは性質が全く異なるから)、普通にお薦めです。20世紀の「聞きやすい」歌曲といえば、クルト・ヴァイルぐらいしか知らないけれど、ペッテションも良いかも。







 ペッテション作品のCDはドイツのCPOというレーベルから発売中。演奏者はバラバラだけれど、主要作品はほぼ出ているはず(交響曲第1番、第17番は作曲者自身が破棄しているため出ていない)。





交響曲



Allan Pettersson: Symphony No. 2; Symphonic Movement
Gustaf Allan Pettersson Alun Francis Glasgow BBC Scottish Symphony Orchestra
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Allan Pettersson: Symphonies Nos. 3 & 4
Gustaf Allan Pettersson Alun Francis Saarbrucken Radio Symphony Orchestra
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Pettersson: Symphony Nos. 5 & 16
John Edward Kelly Gustaf Allan Pettersson Alun Francis Saarbrucken Radio Symphony Orchestra
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Allan Pettersson: Symphony No. 6
Gustaf Allan Pettersson Manfred Trojahn Berliner Sinfonie-Orchester Deutscher-Symphonie-Orchester Berlin
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Allan Pettersson: Symphony No. 7
Gustaf Allan Pettersson Gerd Albrecht Hamburg State Philharmonic Orchestra
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Allan Pettersson: Symphony No.8
Gustaf Allan Pettersson Thomas Sanderling Berliner Rundfunk-Sinfonie-Orchester
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Allan Pettersson: Symphony No. 9
Gustaf Allan Pettersson Alun Francis Berliner Rundfunk-Sinfonie-Orchester Deutscher-Symphonie-Orchester Berlin
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Pettersson: Symphonies, Nos. 10 & 11
Gustaf Allan Pettersson Alun Francis Hannover Radio Symphony Orchestra
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Allan Pettersson: Symphony No. 12
Allan Pettersson Manfred Honeck Swedish Radio Symphony Orchestra
CPO (2006/05/16)




Allan Pettersson: Symphony No. 13
Gustaf Allan Pettersson Alun Francis Geoffrey Trabichoff Glasgow BBC Scottish Symphony Orchestra
CPO (1995/01/25)
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Allan Pettersson: Symphony No. 14
Gustaf Allan Pettersson Johan M. Arnell Berliner Rundfunk-Sinfonie-Orchester
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Allan Pettersson: Symphony No. 15; Das Gesegnete, das Verfluchte
Gustaf Allan Pettersson Peter Ruzicka Peter Ruzicka Berliner Rundfunk-Sinfonie-Orchester
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協奏曲



Allan Pettersson: Violin Concerto No. 1; Chamber Works
Eckart Hubner Bernhard Schmidt [cello] Bernhard Schmidt [percussion] Johannes Peitz Gustaf Allan Pettersson Albert Schweitzer Quintet Mandelring Quartet Christiane Dimigen Volker Banfield Michael Scheitzbach
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Allan Pettersson: The Concertos For String Orchestra
Gustaf Allan Pettersson Johannes Goritzki Deutsche Kammerakademie Neuss
CPO (1994/10/25)
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 ジャケットが良いですね。





2 件のコメント :

  1. すげー聴いてみたい・・・

    新宿のタワレコとか置いてるかね?

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  2. 新宿のタワレコだと普通の「クラシック」コーナーにありますね。時代区分としては「コンテンポラリー」と言えるのですが。ショスタコーヴィチが「クラシック」と呼ばれる、みたいな。ただ、タワレコで買うと500円ぐらい高い気がしました。アマゾンだとやたらと時間かかった気がしたな…。

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