ポップ文学の先駆か

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横しぐれ
横しぐれ
posted with amazlet on 06.06.15
丸谷 才一
講談社 (1990/01)
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 丸谷才一の作品構成能力の上手さに舌を巻く。作曲家でいうならブラームスだろうか(ちょうど読みながら聴いていたので余計にそう思ったところもある)。主題の魅力や音圧で圧倒するようなものではない。けれども、隙間無く積まれた石垣のように崩れない。小説の終結部におけるスッと抜けるような感じも似ている気がした。それは、チャイコフスキーやドヴォルザークのような強奏による快楽的なものではなく、「はぁ…」と息を漏らしてしまう上手さである。





 以前に『笹まくら』を読んだ時はジョイスを感じだけれども、『横しぐれ』に収録された作品はボルヘス的である。「初旅」、「中年」でみられる時間軸のずらしによるリアリティの隠蔽や、「横しぐれ」における文学的資料の織り交ぜ(それが正しいものなのか、我々には検証することができない!そしてそれは徹底的に無意味である)は、白昼夢を見ているかのようにさせる。ああ、素晴らしい。恐ろしいのは「だらだら坂」の聴き手の不在だろうか。





 旧かな遣いで綴られているのだが、文章は美しく、ポップである。これは旧かなによる「ポップ文学」ではないだろうか。まぁ、出てくる作品と同時代のものといえば「ゴーゴー」とか「ビートルズ」だから、古いのだけれど、そこもまた良い。ゴーゴーって…みたいな。丸谷先生ったらモボねぇ…。





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