トランペットの雑学

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 id:mochilonさんのところに「ロータリー式トランペットはジャズで使われないのか?」という素朴な疑問が書かれていたので、その疑問に少し答えられるような記事を書いてみる。





 ピストン式とロータリー式の違いについては大雑把に言って、前者が「音色が派手」、後者が「音色がまろやか」ということになる。クラシックにおいてロータリー式が使用されるのは、主に「ドイツ物」をやるとき。ロータリーの甘美な音色が弦楽器や木管楽器と溶け込み易い、とされている。日本のオーケストラでもドイツ物をやるときは今結構ロータリー使っているところが多いですよね。ただし、トランペット奏者というのは大概「マニアックな人種」が揃っていて、プロは言うにおよばず、アマチュアの人でさえ「一人5本が当たり前」みたいな世界だから、人によっては「ベートーヴェンの○○という曲でロータリーは微妙だよね。あれは調性的にも合わないよ」などと言っていたりする。





 じゃあ、何故ロータリーはピストンよりも「まろやか」になるのか、というとこれはもちろん構造上の違いにあるわけです。http://www2.yamaha.co.jp/u/naruhodo/05trumpet/trumpet1.html#2を参照してもらえば分かり易いのだけれど、ロータリーの方が構造が複雑だ。管が途中でグルグル曲がったりしていて、その分必然的に息が通り難く、抵抗感が生まる。要するに吹きにくい。この吹きにくさが「まろやかさ」の秘密であって、ピストンのようにストレートに鳴ってくれないから、ロータリーの音色は「まろやか」なのだ。




 まぁ、構造上の違いを説明しないまでもジャズ、特にバップ期に話を限定するならばロータリーを使われないのはなんとなく理由が見えてくる。何せ、クラシックでは「弦楽器と管楽器と音色が溶け込み易い」と言われているぐらいだから。溶け込んじゃうのである。マズいだろう、それは。バップ期のジャズなんて「俺が、俺が!」の世界であって、それこそニューヨークのジャズ・クラブでは毎晩アドリブ勝負だのが行われていた時代に、溶け込んじゃマズいだろう。そこは主張しないと。だから、トランペッターが選ぶ武器は派手な音色が出るピストンなんじゃなかろーか。マイルス・デイヴィスの自叙伝を読むと「俺はフリューゲル・ホルン*1が大好きだったんだ。あれはすげー楽器だ。豊かで甘い音色にシビれたね。でも、あれはジャズにはむかない楽器だ。音が負けちゃうからな(意訳)」って書いてあるし。まろやかはダメ、絶対なのかもしれない。





 ちなみに↑に挙げたのはキューバのトランペット奏者、アルトゥーロ・サンドバルのアルバム。この人はもうバカテクもバカテクで、ジャズもクラシックも吹けるというトランペッターである。このアルバムでもピッコロ・トランペットを使ってコンチェルトを演奏しているが、表情豊かな表現が面白い。特にロータリーを使っているわけじゃないけれど、ジャケットが良かったので。ちなみにこの人はジャコ・パストリアスのビッグ・バンドにも参加している。




*1:ロータリーよりもまろやかな音が出る





1 件のコメント :

  1. も、ものすごい勉強になります。ありがとうございます!

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