フランコ・サケッティ 『ルネッサンス巷談集』

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ルネッサンス巷談集 (岩波文庫 赤 708-1)
フランコ・サケッティ
岩波書店
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十四世紀のフィレンツェに生まれたフランコ・サケッティは自分が見聞きした面白いお話をまとめて『短編小説三百篇』という本を書いたそう。本書はそのなかから七四篇が訳出されています。サケッティ家はフィレンツェでは大変な名家で、ダンテの『神曲』にも名前がでてくるような(解説より。たしかに出てきたような気がする)由緒正しき家柄です。しかし、フランコ・サケッティが集めた話ははっきり言ってなんの教訓もない、面白おかしいものばかり。由緒正しき家柄なのに、こんなんばかりで良いのか、と心配になる内容でした。とくに猥談のレベルがかなりひどい。スポーツ新聞のエロ・コーナーと程度が同じに感じられ、性が笑いへと転ずるという現象は普遍であるな、とさえ思います。吝嗇や堅物がバカにされるのは落語にも通じるところです。とても面白かった。

こうした古い笑い話を読んでいると、逆にまったく意味がわからない、単なるキチガイ沙汰にしか思えないエピソードにも出会うのですが、その意味の分からなさも楽しいんですよね。なかでも第四〇話の飛び方がすごいです。この話は妻の尻に敷かれっぱなしで、下男や下女にも馬鹿にされている主人があるとき、キレてしまい、倉庫にあった鎧でフル武装のうえ暴走、家のものを破壊しまくるは、家の人を刀の峰で殴りまくるは……というものなんですが、オチらしいオチもないのでただ単に「人を虐めすぎると、キレたりすることがあるので怖い」という話になってしまっている。

また、昔だから男尊女卑があるのかな、と思いきやそうでもない、というのも面白いです。第四〇話の例にもありますが「おかみさん」というのがとても強い存在として活動しているのが意外だった、というか。女性の貞淑さや慎ましさは、あくまで騎士道小説にでてくる「女性の美徳」であったのかもしれません。旦那さんとのセックスを楽しみすぎ、旦那さんが病気になったり、とまさに「骨抜き」にするような女性が多々でてくる。その生き生きとした感じが良いな、と思えます。

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