Kip Hanrahan
american clave (2012-01-18)
売り上げランキング: 16640
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昨年末の来日公演にはいけませんでしたが、キップ・ハンラハンの新譜を買いました。ハンラハンといえばアメリカン・クラーヴェの主宰であり、ピアソラ晩年の大傑作アルバムをプロデュースした人物としても有名ですから、当然旧譜については何枚かチェックをしていたものの実は微妙に自分のツボからはズレており、それは主に「このヴォーカル、いるの……?」、「このポエトリー・リーディング邪魔じゃない?」というところで(もちろんそこには言語障壁があったりするわけですが)イマイチなんだかよく分かってない状態でした。本作のリリースに際してはもろもろのトラブルがあった模様。それらについては、以下のリンクを参照のこと。
さて、本作はどうだったかと言えば、ここで初めて良さが分かってきた、というか、聴いていて大変に気持ち良く、そしてズッシリとキた、という感じです。壮絶なラテン・パーカッションによるポリリズムは、もう大変なことになっている、として言い様がありません。とくに「Kuduro of Assassins and Laughter」は、なんですか。ラテンとアフリカが坩堝のなかで絶妙に混合し、リズム地獄的な様相を呈している。しかし、そうしたアッパーな楽曲ばかりでなく、詩情というかおセンチ系というか、色っぽさというか、それらが複雑に入り乱れたラテンの夜感覚にも溢れていて素晴らしいのでした。
ウクライナ移民とアイルランド移民のあいだに生まれ、ニューヨークでトロツキーと交流があったという祖父に育てられたキップ・ハンラハンという人物。こうした出自でラテンへと没入していく、というのが相当に複雑な感じがするのですが(彼はユダヤ系でもある)、当然その複雑さはマージナルなもの、引き裂かれたアイデンティティから生まれるサムシングを連想させ、なんか色々大変だったんだろうけれど、今、これだけエロカッコ良いアルバムを作ることができて良かったね、とか思いますよ、マジで。
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