とにかく法律が中心であって、君主はその誠実な運用者でなきゃならない。法への厳格さが特徴的で、君主は自分の意見を秘密にすべきだし、自分の人格のようなものも出しちゃいけない。じゃないと、臣下がおもねりへつらうような擦り寄り方をしてきて、国のためにもならないし、クーデターを企んだりする。だから、君主は聞いてるんだか聞いていないんだかわからないふりをしていろ、すると臣下は勝手に動いてくれるハズだ、と韓非は言う。
そんな……一体、君主の役割ってなんなんですか、という感じなのだが、まず、法を中心とした国家の運用の最大の決定者としての役割は君主に委ねられている。というか、決め事は全部君主が決めるものと韓非は考えている。そうじゃないと、臣下のなかで「俺を通さないとこの国のことはなんもできないよ」みたいなヤツがでてきて、モラルハザードがおこったり、ソイツが私腹を肥やしたりしちゃうから。私腹を肥やした挙句、徒党を組んでクーデターを企むから、自分じゃないヤツに権力があるように見せてはいけない。ちょっとでも勘違いしてるヤツがいたら徹底的に潰せ、という感じである。
いや、でも現実的に君主がなんでも決めることなんか無理でしょ、と思うんだが、その辺は特に第1冊の収録部分では触れられていない。最後まで触れられないかもしれない、のだが、おそらく、韓非は規律の内面化を徹底的にやることで、なんとかしようとしているのだと思う。法に反したら罰する。法に即して良いことをしたらお金や土地を与えて褒めてやる(あくまで基準は法。個人的に好きなヤツを重用するとかは、おもねりへつらうようなヤツがでてくるのでNG)。これで国に反するものを排除しつつ、政治を、国を運用する。
言うなれば、韓非の描く君主とは、人間としては透明な存在で、君主である正当性はどうやって確保するんだ? とさまざまに疑問が湧くのだけれど(そもそもどういう法律が良いのか、みたいな話もあんまりない)、機械的な社会論のように読めてとても興味深い。結構同じ話の繰り返しのような感じではあるのだが、どこそこの国の人は、こういうわけで殺された・滅亡した、という説話がたくさんでてくるので単純に読み物として楽しい本である。
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