岡倉覚三 『日本の目覚め』

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日本の目覚め (岩波文庫)
日本の目覚め (岩波文庫)
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岡倉 覚三
岩波書店
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岡倉覚三(岡倉天心)の『日本の目覚め』を読む。わたしは完全にタイトルの印象から本の内容を勘違いしていて、欧米に向けて「日本はこんな感じで目覚めてんだぞ! どうだこの野郎!」と知らしめるために意識の高い日本人が書いた本かと思っていたんだけれども、違っていた。どっちかっていうと今(最初に出版されたのは、1904年のニューヨーク。岩波の日本語版は1940年に村岡博によって翻訳されたもの。岡倉は英語で書いて、英語で出版しているのである)どういう風に目覚めているのか、という話ではなく、むしろ、どのように目覚めていったのかの歴史的な記述が中心となっている。日本思想史についての最も最初期に書かれた本なのかも。

岡倉の史観がなかなか面白くて、とにかくアジアはヨーロッパと比べたら弱っちくてダメである、それがなんでなのか、この暗黒状態を彼は「亜細亜の夜」と呼ぶのだけれども、なんで亜細亜は真っ暗なのか、と冒頭はそんな話から始まる。最初、日本の話から始まらないのね。中国とかインドとか、19世紀には随分ヨーロッパの国々にひどい目にあわされた。その元凶は、モンゴルが悪い、と。そこまで遡るのである。チンギスハン、コイツのせいでそれまでの文化がズタボロにされちゃったよ、と。おかげで彼らは統一を失っていたので、ヨーロッパにも付け込まれちゃったのだ。

で、日本はどうかというと、モンゴルには征服されなかったけども、侵略は受けた。これはある種のアレルギー反応というか「島国的偏見」を生んだと岡倉は言う。イエズス会の扇動によって起こされた島原の乱、そこからのキリスト教排斥なんかも、その世界から孤立したいという欲求の表れなのだ。それで、独特の文化が育まれたとはいえ、270年ぐらいの鎖国のあいだは「生き埋め同様」だったのである。日本も亜細亜の夜の立派なメンバーになっていたのね。

で、そういう生き埋めだったのが、黒船来航から急に「やべーよ」みたいな激震が走って反省して変化が生まれたみたいな描き方になっていないのが、この本の面白いところ。内部から変化の声を岡倉は描いている。そこで重要になった思想は、徳川の学問所で授けられる朱子学を否定した古学派、そして進歩と知行合一を求める陽明学、さらに国学派による歴史研究による天皇への回帰。要するに、徳川体制反対みたいな思想が出てきていて、黒船来航からの変化もその延長にあるのだよ、ということであろう。

幕末の動乱期についての記述もかなり濃く書いてあって、そのなかで西郷隆盛を「我が国のガリバルディー」と評価してたりするのも面白い。終盤は、西洋から学んだことがどう日本に生かされてるのか、どういう目覚めを生んだのかが書かれているんだけれども、個人的には、西洋のものをガンガン取り入れていきまっせ時代の話よりも、その前の陽明学者の話だとかの方が興味深く思った。

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