韓非 『韓非子』(4)

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韓非子〈第4冊〉 (岩波文庫)
韓 非 金谷 治
岩波書店
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『韓非子』の最後の巻までたどり着く。3巻は説話集という感じだったが、この巻はまた内容が濃くなる。孔子disったりして。でも1、2巻で言ってることと内容は基本的にかぶっているので、新しく「ほう!」となるポイントは少ない。エッセンスは1、2巻で充分に語られているのだと思う。ともあれ、繰り返し語られることで見えてくるものもある。韓非が目指す理想社会の姿ってとにかく「治世者による法の正しい運用が行われる安定した社会」なのね。言ってしまえば、聖人だとか特別な政治家みたいな人が不要な社会を理想として語っている。これはなかなか反学問的な学と言えるのかも、と思った。

例えば経済学は「市場の異常な状態に対する分析の学」であって、市場がうまくいきまくっているのであればとくに言うことがない。あるいは物理学で言えばニュートン力学で大抵のことは解決できてアインシュタインの理論を持ち出すシーンはごく限られている。韓非の理想社会とは、経済学がいらない社会、アインシュタインがいらない社会みたいな感じだ。正しい法の運用によって、社会は安定する、すると、知者がありがたいようなことを言う必要は無くなる。そういう社会に向かうためには、法を正しく運用すれば良い。悪いことをした人には罰を与え、良いことをした人を評価する。すると安定するはずであろう、と。韓非は繰り返しこういうことを言っている。

韓非が考える人間のモデルって性悪説的であるのだが(彼は、人間なんか信じるな、とハッキリ言う)それは実に、合理的な捉え方がされていると思う。韓非はあまり人間の不合理な側面を考えてはいない。お金が目の前に落ちていて、誰も見ていなかったら盗むし、あるいは、盗まずに届け出たほうが自分の得になることがわかっていれば、届け出るであろう、という風に考える。損になることがわかっているのに、損になる行為をする人間なんかいないでしょ、という感じである。

こういうのは韓非の明快さ、面白さなのだけれども、やっぱり今読むと単純すぎるな、と思わなくもない。モチベーションを引き出すための施策を語るにしても、韓非は、褒賞を大きくすればするほどモチベーションが上がる、と言う風に考える。でも、現代の我々はそうじゃない。いくらお金がもらえるとしてもモチベーションが上がらない仕事があることを知っているし、やりがいというお金に還元できないものをモチベーションにしている人がいることを知っている。端的に言って古びちゃってる部分があるんだよ。それは韓非がいかにクラシックであるかを物語っているのだけれども。

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