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プラトン 『ティマイオス』(4)




原文


Timaeus
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 それを聞いたソロンはとてもびっくりして、古代の市民たちについての説明を引き続きしてくれるよう神官たちに包み隠さず熱望した。『私は惜しむつもりはないよ、ソロン』。神官は答えた。『私は君自身の利益のために語ることにしよう。それは君たちの都市のためでもある。とりわけ、君たちと私たちの両方の都市を作り、育て、教育してくれた守護神の栄誉のためにね。我々の都市より遡ること千年、女神は君たちの都市を初めに作られた。そのとき、彼女は大地とヘファエストゥス*1から種子を受けとり、そしてそこから君たちは生まれたのだ。聖なる古文書に刻まれた記録によれば、私たちの社会ができてから八千年になる。それでは、九千年前の君たちの先祖たちの生活や法律、業績を手短に君に説明することにしよう。ひとつひとつすべての詳細についてくまなく見ていくのは別の機会にとっておこうではないか』


『君たちの先祖の法律と、私たちの今日の法律を比べてみよう。君はかつて君たちのあいだに存在していたものと、私たちのなかに現在存在しているものとの間に多くの共通項を見出すだろう。第一に、君は神官の階級が他の階級とは区別され分け隔てられていることに気づく。次に、労働者階級の場合では、牧夫や狩人や農夫などのそれぞれの集団が独立して働き、他の集団と混じることがない。とくに戦士たちの階級はどの階級からも区別されている。法によって彼らはもっぱら戦争にまつわる物事に専念するよう縛られているのだ。さらに彼らの装備の様式のなかで、盾や槍はもともとアジアの人々が私たちを攻めようとしたときに使っていたものだ。女神は、最初に君たちが住む地域に君たちを作られたように私たちを作られた。君が賢明であるならば、最初からすぐにどれほどの注意を女神たちに捧げているものか理解できるはずだ。世界秩序に関する私たちの研究において、私たちは神々が人間界に顕現されることによってもたらされる予言や病を癒す薬を含む、数々の発見を追ってきた。そのなかで私たちは規律訓練に関することなども学びえた。これは女神が君たちの都市を作った際に、最初に考案した社会規範の仕組みとまったく同じであるという事実に他ならない。君たちを産んだ土地として女神がかつて選ばれ、後の人々に優れた知性をもたらすような一年中穏かな気候を見つけられたようにね。そして、戦争と知恵を愛するようになり、また後の人々が彼女自身を愛するようになるような土地を女神は選ばれ、そして君たちの都市を初めに作った。君がそこに住み、このような法律を見てきただろう。いまや君たちの法律はさらに良いものとなり、そしてどんな素晴らしさにおいても他の人々を上回るようになった――最初の人々が期待し、神によって育てられたようにね』

『ここに記録として残っている君たちの都市に関する多くの偉大な業績は、畏怖の念を抱かせるものだ。しかし、重大さと素晴らしさにおいてそれらすべてを上回るものがある。記録は、ヨーロッパとアジアを全体を一緒に横柄なまでに攻め入って、君たちの都市にひとつの休息をもたらした莫大な勢力について語っている――それらは大西洋の向こうからやってきたものだった。ヘラクレスの柱*2と君たちが呼んでいる海峡の前に島があったから、当時この海は通行可能だった。この島はリビアとアジアをあわせたよりも大きく、そして、その当時旅をしていた他の島々の人々に通行路を提供していた。これらの島々から人は、取り囲む海を越えたところにある対岸の全大陸にも旅することができたのだ。私たちが話している海峡の内側には狭い入口をもった港以外なにも見ることができないが、その外側の海の実状に反して、大陸と呼ぶのに相応しい島が存在していたのだ。このアトランティス島においては、偉大で荘厳な国王の力によって支えられ、島全体だけでなく、他のたくさんの島々や、大陸の一部もまた支配していた。さらに、その支配は海峡の内部までおよび、リビアをこえてエジプト、ヨーロッパを超えてチレニアにまで達した。ある日、この勢力はそれらの力を結集して、君たちの土地や私たちの土地を含めた海峡内のすべてを支配下にしようと進軍した。ソロンよ、君たちの都市はすべての人類のための素晴らしさと力によって明るく輝いていたのかもしれない。精神の高貴さと戦争の技術を使うことにおいて、他のどこよりも秀でていた、君たちの都市はギリシャ全体の指導者として最初に立ち上がった。その後、君たちの国は孤立し、同盟国から見捨てられ、最大の危機に達した。しかしながら、侵略者たちを乗り越えて、君たちの国は勝利の記念碑を建てた。君たちの国は奴隷となることを防ぎ、また、寛大なことにヘラクレスの境界に住む残りの人々も解放した。しばらくした後に、まったくに恐ろしい地震と洪水がひきおこされ、苦難の日々がはじまることになった。そこで君たちの都市のすべての軍隊がいっぺんに大地に飲み込まれ、また同じようにアトランティス島も海のなかに沈み、そして消えてしまった。そうして海は島の残骸が浅瀬の底にたまって泥の層を作っているので、今になっても通ったり、探索したりできないものとなったのだ』」




*1:私訳者コメント:Hephaestus - Wikipedia, the free encyclopedia。鍛冶屋だの職人の神様らしい。


*2:原註:ジブラルタル海峡





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