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私の家に初めてパソコン(NECのバリュースター!)が来たのが96年だったと記憶している。父親に「ねえ、パソコン買おうよ、これからはパソコンだって~」と吹き込んで購入させた戦略的中学生だった私は、その後も順調にパソコンを使いこなせるようになり、現在もデジタルネイティヴにはまだまだ負けんぞ、というぐらいにはデジタル関係の知識を持って生活できている。それもこれも高校時代に『週刊アスキー』を熱心に読んでいたからであろう――で、最近急に当時のことが懐かしくなってスタパ齋藤が『週刊アスキー』で連載していたコラム「物欲番長」の単行本を一気買いして一気読みしたのだった。
これはライターのスタパ齋藤が、物欲の赴くままにデジカメ、パソコン、プリンター……などなどの各種デジタル・グッズを買いまくり、その使用感をレポートしていく内容なのだが、今読むと猛烈に面白い。この3冊の単行本に収録されているのは1998年から2000年ごろの記事だから、当然紹介されている製品はもう古くてジャンク屋で探さなきゃいけないようなモノばかりなんだが「うわ~、こういうのあったよね~」とかものすごい回顧的気分に浸れる。なにしろ、当時はUSBもまだまだこれからだし、MP3も全然普及してないし、デジカメは「さすが150万画素!」と驚かれるぐらいだし、CPUのクロック周波数の単位はMHzだしで、今では考えられない状況であり、(ネガティヴな意味で)信じられないスペックの製品が、ものすごい値段で売られてたりしたのだ。IBMのThinkPad(CPUのクロックが300Mhz、メモリ128MB、HD容量8.1GBのマシン)が82万とかですよ。もう衝撃しかない。このような『物欲番長』を今読むと、この10年での電子機器周りの進化スピードの速さが改めて感じられる。これはほとんど考古学的な驚きである。
記録されている時期も「爆発的に家庭へとPCが普及する直前」といった良い感じの時期だから余計に面白いのだろう。わけのわからない記録メディアがわんさかひしめいていて(マイクロドライヴとかClick!メディアとか……)戦国時代みたいである。そーいえば、大学に入った年(2003年)初めてのPCを使った授業で、ZIPを渡されたりしたなぁ……。モノが変われば、使っている人間の生活も変わる。今や誰もMDに曲名を入れたりしていないだろうし、ケータイをわざわざケーブルでPCに繋げてモバイル通信をしている人も見なくなった。ケータイでメールができるのなんか普通だし、PDAの機能はまるごとケータイに取り込まれてしまった(やっぱり、ケータイの進化がすげーな)。かつて色々あったものが、今は見事なほどスマートに統合されているように感じられる。ホント、便利になったんだねえ……とモノを通して生活の変化を追えるのも面白い。
で、こういう進化を支えたのが、スタパ齋藤のようなタイプの「とにかく新しいモノが欲しい! 気になる!」という方々だったのだろう。会社にもシャープのスマートフォンと、GalaxyTabと、iPod Touchを同時期に買って、全部持ち歩いている人がいて、話を聞くとザウルスも持ってたし、モバイルギアも持ってたし、さまざまなハードを買いまくっていた物欲星人なのだった。こうした人々にもリスペクトを払いたい気持ちにもなる。
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