トマス・ピンチョン 『LAヴァイス』

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LAヴァイス (Thomas Pynchon Complete Collection)
トマス ピンチョン
新潮社
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邦訳で読めるトマス・ピンチョンの最新作『LAヴァイス(Inherent Vice)』を読了。基本的にピンチョンの小説って「謎の女を追う」とか「謎の組織がどうのこうの」みたいなミステリー仕立てのプロットがあるのだけれども、本作が初めての「本格探偵小説」なんだと思う。発表された2009年にピンチョンは62歳。で、わたしは途中まで「やっぱ、ピンチョンも年なのかなー、結構普通の小説じゃん。主人公がひたすらマリファナやりまくって、情けない感じなだけで」と思って読み進めていたのだった。

視点は、主人公の私立探偵、ドックから動かないし、序盤ちょっとダラダラしてないか?  いつになったらバカ博物学描写がでてくるんだ? 「どうなんだ、これは……」とページをめくっていくうちに、登場人物はどんどん増えてきて、バカな脱線(聖書に登場する湖上を歩くイエスをサーフィンの暗喩と解釈する伝説のサーファーとか)やニューエイジ思想やオカルティズム(『逆光』にはシャンバラ帝国がでてきたが、今回はエミリア大陸!)、そして映画やテレビドラマ、サイケロックやサーフミュージックといったサブカルチャーの記述が満載になり、安定のピンチョン・クオリティで思わずガッツ・ポーズである。

この小説、とくに終盤からの伏線回収モードに入ってからがスゴい。「こんなに急いじゃって良いんですか……?」とどんどん伏線が回収されて、どうでも良い脱線だと思われてきた記述さえも重要なシーンに「あれ、伏線だったんかい!」と登場する。ピンチョンの作品中、もっともそのミステリーが解かれていく快楽が高いものではなかろうか。で、また、ちょっとジーンとさせる要素をいれてくるんだよね。この小説の世界ともつながりを持っている『ヴァインランド』以降、なぜかピンチョンは必ずジーンとくるシーンを書いている。しかも、きまって家族愛だっていう。ちょっと最高すぎ。

で、ポール・トーマス・アンダーソンが監督で映画化する、っていうね。読了後にトレイラーを見たんだけれども、すごく良く原作が持ってる雰囲気を再現していて、日本公開がとても待ち遠しくなった。

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