ルイス・ブニュエル『河と死』

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ルイス・ブニュエル DVD-BOX 1
紀伊國屋書店 (2006/04/22)
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 結局一晩でボックスに入っている3本全部観てしまった。1954年製作の『河と死』は、すっげーつまんないことでアンギアノ家とメンチャカ家の両家の間に殺し合いの連鎖が生まれて……っていう仁侠映画っぽい雰囲気漂う作品。殺された人間は河に流され埋葬され、殺した人間は河を泳いで渡り向こう岸にある山の中で隠遁生活を行わなくちゃいけない、っていう風習がある設定は社会学/宗教学的な考察が可能なものであり、また、現代劇でありながら(アンギアノ家生まれの主人公は都会育ちの医者で一族の名誉を守ることを重要視していない)決闘が許されているというメキシコの近代の特殊さがうかがい知れる……という点において最も私的に分析がし易い/意味付けが容易な一本である。


 好き嫌いで言ったら「上手くまとまり過ぎてて、そこまでグッとこない。『幻影は市電に乗って旅をする』の方が断然良い」というところ。ちなみに決闘行為は公的権力に属しない私的な暴力であるがために、暴力の中央集権化を図る近代国家において厳禁なのだろう(私刑も同じ理由でダメ)……とか言っておくと何らかの筆記試験の模範解答になるのでは、と思います。どうでも良いけど、って思いつつもこういう特殊さは「中南米って深いなぁ……」って思わされる要因の一つ。


 あとメキシコ人の顔がみんな同じに見えちゃって、同じような顔の人が出てきては死んだりするんで途中で「あれ、何回も死んでない?生き返ってる?」と勝手にマジックリアリズムを錯覚してしまう。これ冗談じゃなくて、今ならDVDを繰り返し再生して確認できるけど、昔は劇場でしか観れず、しかもリニアな流れに観客は制限されちゃってるんだからこの映画に「マジックリアリズムを錯覚する人」がいてもおかしくない気がする。


 今回初めてブニュエル作品を鑑賞しましたが3本ともユルい中毒性を持ってる作品で面白かったので引き続きボックスセットの購入をおこなっていこうかと思いました(次は『昇天峠』が入ってる『4』)。割とストーリーとかどうでも良くて、単位時間あたりの情報量があんまり多くない気がするのもタイプです。『1』のなかでは『幻影は市電に乗って旅をする』がその特徴を強く持っている。なので、今回の3本では『幻影は……』が一番面白かった。歩いてたら口の中に砂がたくさん入ってきそうな街のなかをボディの塗装がハゲまくった古い電車が走ってる絵もカッコ良いのだよな。電車は路面電車なんだけど「『路面電車いいよねー、荒川線とかほっこりしちゃうよねー』とか言ってるヤツは、全員鉄パイプでブン殴る(お前らの持ってるトイカメラもついでにブチ壊す!)」みたいな力強さがある。





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