カール・マルクス『資本論』(三)

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資本論 3 (3) (岩波文庫 白 125-3)
マルクス
岩波書店
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 巻を進めるごとに、読み飛ばしていくページが多くなっている気がする「マルクス資本論マラソン」だが、漸くここで全体の3分の一にたどり着く。ヘーゲルを読み……マルクスを読み……って「今何時代?お前、何共闘?」という感じだが、これはこれで面白い。しかし、なにひとつ賢くなった気がしない。数式が出てくるとついクセで読み飛ばしてしまう。なのに「マルクスを読んだ」とか言っちゃって「やーねー」という感じである。「インテリぶりやがって」とどこかからお叱りの声がかからないのが不思議でならない。2ちゃんねるのヲチ板の皆さーん!ここに乙女なんかより叩きがいがあるインテリぶった勘違いサラリーマンがいますよー!!と声を大にして言いたい。


 第3巻は2巻に引き続き「資本家はどうやって剰余価値を生み出しているのか」についてのお話から。これを端的にまとめてしまうと「どんなことがあっても資本家がまるもうけする構造ができちゃってるんだよー」という話になると思う。例えば、ある工場で時間労働制を採用したとする。「働いた分だけお金をあげよう」。これはとても納得がいくもののように感じられる。しかし、そこでの時給は納得がいかない額に設定されている。すると、普通に8時間ぐらい労働したぐらいでは、とてもじゃないが労働者たちは生活することができない。必然的に労働時間は長くなる――資本家が設定した時給のなかには既に「不払労働」が埋め込まれているのだ、という具合にマルクスは告発を行う。


 次にマルクスは、労働者から不当に労働力を搾取し、資本を蓄積した資本家がどのようにその資本を再生産していくのかを見ていく。ここでも図式は一緒である。勝ち続けるのは常に資本家なのであって、労働者は常に負け続ける。たとえ、労働賃金があがって労働者の生活水準が向上したとしても、その賃金が消費されることで儲けるのは資本家なのだ――石炭工が買うパン。これも資本家が労働者に作らせたものなのだから、一旦労働者に手渡された資本はすぐさま別な資本家へと吸い上げられてしまう。あたかも資本が資本家たちの間で循環するかのように。


 この記述は、かなり面白く読めた。マルクス主義は死んじゃったかもしれないけど、マルクスはまだ生きていて、読む価値があるかもなぁ、と強く感じてしまうようなところである。マルクス・イズ・ノット・デッド。19世紀のイギリスの工場労働者の労働環境と、私個人の労働環境には違いがありすぎるけれども「大きな資本の間で大きなお金が動いている」とか「見えないお金がどっかで動いている」とかいう感じは具体的にイメージできる。それを不当だ、とか怒るわけではないけれども、これを読んでてより詳しくイメージができるようになったような、そんな感じがする。だからと言って、別に得するわけではないのだが。


 資本の蓄積過程において、権力は囲い込みや暴力的な行為によって土地を奪い、そして経済活動の領域を広げ、土地を追われた牧童や農民が都市の労働者となった――という説明の箇所――これは世界史の教科書にも載っているような説明だった気がする――も面白かった。当然、土地を追われた牧童や農民が皆、新興工業へと吸収されるわけがなく、受け皿がなかった人もいて、こういう人たちは浮浪者とか乞食になってしまったそうである。彼らのように経済活動に参画しない人びとを、時の権力はどのように扱ったか――マルクスはこれを16世紀イギリスの法律を見ながら明らかにしていく。



ヘンリー8世、1530年。老齢で労働能力のない乞食には、乞食鑑札を与えられる。これに反して、強健な浮浪人には、鞭打ちと拘禁が与えられる。彼らは荷車のうしろに繋がれて、身体から血の出るまで鞭打たれ、その後に、その出生地または最近3年間の居住地に帰って「労働につく」ことを誓約せねばならない。なんという残酷な皮肉!ヘンリー8世の第27年の法律には、前の法規が繰り返されるが、新たな補足によってさらにきびしくされる。再度浮浪罪で逮捕されれば、鞭打ちが繰返されて、耳が半分切取られるが、累犯3回目には、当人は重罪犯人で公共の敵であるとして、死刑に処せられることになる。



 職がなく、街をぶらぶらしているところを3回見つかったら死刑!ほとんど鼻とアゴがやたらと尖った顔の人が出てくるマンガの世界だ。しかし、このような法律は16世紀のヨーロッパ諸国に普通に見られていたという。マルクスはこれを非難する。しかし、中央集権的な王権によるこれらの暴力によって、近代が爆発的に成長する礎は築かれた、ということが言えるのであって全否定することはできないものだろう。つくづく「近代って因果なものよねぇ」と感じてしまう。





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