ジェルジ・ルカーチ『小説の理論』

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小説の理論 (ちくま学芸文庫)
ジェルジ・ルカーチ 原田 義人 佐々木 基一
筑摩書房
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 以前アドルノを集中的に読んでいたときに、訳注などで「この箇所はルカーチの『小説の理論』を参照していて……」という記述が多く見受けられたので、この本は長らく気になっていた本だった。しかし、最近になって重版されたので読んでみたものの「さぞ面白いんだろうなあ」という期待は見事に裏切られてしまう。とにかく読みにくい。この驚異的な読みにくさは長谷川宏訳ではないヘーゲルの翻訳にも通ずるものがあり、長谷川宏がちょうどこの訳文を断罪するような形で文庫版解説を書いていたりする(原文もかなりひどそうだけれども)。小説家の固有名は出てくるけれど、作品の具体的な引用などはほとんど見られず、延々と抽象的な話が続くので久しぶりに途中で読むのをやめたくなるような本だった。こんな風に書く人がいたら今では誰にも相手にされなそうな、そんな気さえする。


 ともあれ、読みにくいからといって理解しがたいような難しいことが書かれているか、というとそうではない。理論的な基盤は、ヘーゲルの美学・歴史哲学にほぼ準拠していると言っても良く、ものすごく単純に言ってしまえば「ギリシャは良かった。もうなんか、全体性っていうんですか?精神と世界の統一感っていうんですか?そういうのがあってさあ、ものすごい豊かな時代だったわけですよ。でも、段々と自我が目覚めていくとさ、精神と世界が分裂しちゃうのね。そこで小説家たちが再度統一を目指して頑張るんだけど、やっぱり無理で、その不可能性のなかからイロニーが生まれてきて……」みたいな話だと思う。


 こういう風に要約してしまうと、ますます読む価値が感じられなくなってきてしまう。こんなこと言っている人、いまたくさんいるだろうし。今、復刊された意図もよくわかんないし。もしこのタイトルで「小説の書き方が書いてある本」だと勘違いした人が買ったらどうするんだ、とどうでもいいこと心配してしまう。これなら福田和也の『奇妙な廃墟』を復刊してくれた方がありがたかった。





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