指揮=スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
クラリネット=リチャード・ストルツマン
ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲
スクロヴァチェフスキ:クラリネット協奏曲(日本初演)
ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」(デ・フリーヘル編)
夏休みを明けて下期シーズンに入っての読響定期、1発目でスクロヴァチェフスキ御歳88歳(米寿)の登場である。今回はブルックナーやベートーヴェンといった肝となるレパートリーからちょっと外して、メインにヴァーグナー、前プロにヴェーバー、中プロに自作のクラリネット協奏曲、といろいろ並んでいたけれど、なんというか、スゴい老人力、というか、好き放題やっている感じが充実した演奏に結びついていたのでは、という演奏会だったと思います。
特にヴェーバーはなにか鬼気迫るモノ、というか、老人性の癇癪がいつ爆発するのだろうか、という緊張感と爆発が凄まじいことになっており、これはヤリ過ぎのレベルであって、コンサート・ピースとして切り出された楽曲ならではの無茶苦茶な怪演だったと思います(開幕前の序曲では、あり得ないだろう、という)。それだけに冒頭のホルンが「ウッ」という出来だったのは残念ですが、今日の演奏はライヴでなければそのスゴさが伝わらなかったのでは、とも感じます。短いなかにスクロヴァチェフスキの音楽の鋭さであったり、大きさであったりが詰め込まれていたと思う。
日本初演の中プロは、何と言うべきか、老い先短いおじいちゃんに好きなことさせてあげよう、と見守る家族みたいな気分にサントリーホール全体がなった、と言って良いでしょう。ストルツマンと読響の初競演がまさかこんな何とも言えない曲とは……。曲調としては、20世紀のポーランドの人、という感じもちょいちょい感じさせるのですが……わからなかったですね。自分が楽しむには勉強不足。
メインのヴァーグナーはもう大満腹でしょう。今回はヘンク・デ・フリーヘルという人の編曲版ですが冒頭からブルックナーの交響曲の第3楽章か、という壮大な雰囲気で攻めていました。純器楽を中心に音楽を聴いていたため《トリスタンとイゾルデ》自体あまり聴いてこなかったのですが、ブルックナーやリヒャルト・シュトラウスなど、ヴァーグナーが与えた後世の影響を考えたりもし、おー、楽劇聴いてみようか、などとも。
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