くるり / 坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)

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坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)(初回限定盤B:DVD付き)
くるり
ビクターエンタテインメント (2012-09-19)
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かつて「97年世代」という言葉が在りし頃、日本にはスーパーカー、Number Girl、くるり、という3つのバンドが存在し、それぞれがそれぞれの思い出、当時の若者たちの心を掻きむしっていた、という……その後、00年代という時代のなかで、かつての3バンドのうち、あるバンドはiLLな状態になり、あるバンドは「法被を着たLed Zeppelin」としてカルト化し、くるりだけが様々な変容を重ねながら生き延びているけれど、その生存が可能となったのは、くるりがリスナーから背負わされていたサムシングを、ASIAN KUNG-FU GENERATIONや、チャットモンチーといったバンドへとアウトソーシングすることによって、その身を軽やかにできたからではないか……などというほとんど妄想に近い日本ロック・ミュージック史の一部を冒頭に置く。

で、くるりの新譜である。毎度、日本の音楽批評誌ではくるりが新譜を出すたびに「最高傑作」と特集され、その空回りぶりは「そりゃあ『Snoozer』も無くなるわ」というリスナーと業界との距離を感じさせるものであり、でも、それはくるりというバンドがなにかを背負ってきてしまっている証跡でもあるような気がする。しかしながら、その背負わせている当事者と、バンドが対象にしているリスナーの実像は少しずつズレていっており、もはや俺はこのバンドが相手にしているお客さんではないのは、とか、今回のアルバムでは決定的に感じさせられた。山下達郎が最近のインタビューで「自分の音楽は自分の世代のためのもの。リスナーとともに変化させていく」と語っていたのとは、対照的でくるりはずっと心の柔らかい部分を剥き出しにしている感じの若者相手のロック・バンドなのだな、とか。メンバーが増えたり、佐藤マ社長が金髪になったりしてるけど、根幹みたいなものは変わってない(でも、自分は変化している)。

ただ、こうしてバンドから振り落とされてしまっても、アルバム自体が悪かった、わけではなく、19曲収録された楽曲はこれまでのどのアルバムよりも雑多で多様であり、さすがに「坩堝」だな、という感じがして、何が出てくるか分からないところや、相変わらずのネジれたユーモアは「日本のXTC」的な感じが完成されてきているのでは、という印象がある。正直、良いアルバムだし、完成されたアルバムなのでは。

津波と原発の事故でダメージを受けた福島県相馬市を歌った楽曲は、個人的に地元が近いことがあってとても複雑な気持ちに駆られたが、様々な現実に対して怒ったりするロック・バンドだったよな、くるり(というか岸田繁)ってと思う。件の複雑な気持ちとは「ああ、こんな風に歌われる土地になってしまったのだな」っていう、はっきり言ってポシティヴな気持ちではなく、どちらかというとツラい気持ちである。この気持ちについて考えていたら、地震以降に福島という土地が再発見されている感じ、がイヤなのかも、と思った。

くるりは「相馬の空は美しいよ〜」みたいなことを歌っておられ、公式サイトではその土地を訪れたときの様子も綴られているのですが、地震のあとで相馬の空が一層美しくなったわけでもないですし、なんかねえ……「この土地にはこんなものがあったんですよ!」とか「こんな人たちが生活してたんですよ!」とかクローズ・アップされてるけど、地震以前にもそうしたものは存在していたわけで……そういうものをそれなりに知っている立場にいたりすると、ツーン、みたいな感じになってしまう。ヨーロッパの冒険野郎どもによって発見されたインディアンもこんな気持ちだったんじゃなかろうか、と思ったりして(発見される前から、俺たちはここで生活してたんだよ、っていう違和感)。

ただ、そういうことはロック・ミュージシャンとしての定型的な反応のようだし(猪苗代湖ズなど……アレもかなりキツかった……)、くるりが悪いわけではない。「福島について歌われると嫌な気分になる、ってよっぽど根性ネジ曲がってるんですね!」と批難されても致し方なし。それに、いい加減アルバムの内容から離れ過ぎである。

アルバムが醸す多様なイキフンは、これまでにバンドが出してきた要素でもあり、集大成な感じもする。最後のちょっと長尺の曲は、The Beatlesの後期の楽曲で唐突に過去曲のコラージュが入ってる曲(曲名を思い出せず……追記:「All Need Is Love」でした。教えてもらった瞬間、脳内で完全再生)や、ジョージ・ハリスン(そしてジェフ・リン)の「When We Was Fab」や


Barclay James Harvestの「Titles」みたいで


震えました。

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