ジェネオン エンタテインメント (2008-02-29)
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一昨年、急逝された今敏監督の初監督作品を観ました。ストーカーモノのサスペンス、と思わせておいて、予想を何度も裏切ってくるループ & ネストなサイコ・サスペンスでドキドキとさせられました。98年の時点で、インターネットが重要なアイテムとして劇中に登場する早さもやはり注目されるところなのですが、ちょうど『PERFECT BLUE』の公開時と同時期に放映されていた『カウボーイビバップ』を見直したりしていて、両者のネットワークの描かれ方の違いを考えたりもしました。後者で描かれるネットワークは、ウィリアム・ギブソン原作の映画『JM』や、押井守の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(どちらも95年)で描かれたような空間的な広がりをもつモノで、その描写は細田守の『サマーウォーズ』(2009年)にも引き継がれていく。その空間は広大で自由であり、そのイメージは現実のインターネットにも重なるものです。しかし『PERFECT BLUE』のインターネットはもっと夢がない。ネットワークを介して誰とでも繋がる自由がある、その一方で「誰か」と繋がってしまう、というリアリティがある、と思いました。ネットワークの世界へ霊魂的なものを解き放ち、どこにでも偏在しえる自由を獲得する『攻殻機動隊』や、ネットワークによって集合的な善意と接続される『サマーウォーズ』と違って、『PERFECT BLUE』では特定の誰かとの接続が、主人公の自我を蝕むきっかけを作っていく。言うなれば標的型の攻撃性がここでは描かれているのでは、と思われるのでした。
そのほか、15年近く前の映画に登場するオタクの姿が今と全然変わってなかったり、大友克洋的な重力を強く感じさせる描写があったり、面白かったです。
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