OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜(初回限定盤)
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山下達郎
ワーナーミュージック・ジャパン (2012-09-26)
売り上げランキング: 2
ワーナーミュージック・ジャパン (2012-09-26)
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山下達郎がほとんど40年近い長いキャリアのなかで、なにをしてきていたのか、なにを考えてきたのかを辿る3枚組。このベスト・アルバムの発売時のインタビューのなかではHMVのものが、彼の音楽に関する商品的な考え方、あるいは録音のクオリティへのこだわりについて詳しく、とても面白かった。このインタビューの内容は今月彼がパーソナリティをつとめたNHK-FMの「サウンドクリエーターズファイル」(全3回の構成で、それは今回のベスト盤の枚数構成と一致する)で話されていたことと重複するけれど、番組では毎回違ったゲストとの対話があって、とくに第1回のクリス松村との対話は「同時代のアイドル・ファンが、山下達郎の音楽でなにかに目覚めてしまった」という体験談を熱っぽく語る様子がちょっとすごかったですね。
それは山下達郎(筋金入りの音楽おたく)対クリス松村(筋金入りの音楽おたく)という対決であり、そして信仰や愛の告白でもあったと思う。私はこの番組を聴くまで、クリス松村という人をどういう人かよく知らなかったんだけれども、山下達郎の音楽の射程範囲の広さについても考えさせられる話でもあった。音楽とセクシャリティの関係性、というか……これはとても微妙な話かもしれないが、かつてのゲイディスコ文化を考えれば、初期山下達郎のバッキバキなソウル & ファンク路線はそれととても馴染むような気もする。今更? って話かもしれないけれども。しかし、70年代後半から日本の音楽文化と市場の変化をガッツリ観察してきた人など限られてくるわけで、そうした意味で、バリバリの現役でありながら(収録されている最新曲『愛を教えて』はオザケンの『麝香』みたいだった)生きた化石みたいなミュージシャンである……。
告白すると、これまで私が親しく聴いていたのは、山下達郎が独立してレコード会社を立ち上げてからのアルバムで(このベスト盤でいうと2枚目以降)、初期達郎の音楽はこれで初めて聴いたと言って良い。で、これで「え、こんなにファンクで、こんなにソウルだったの」と驚かされました。ちょっと前に、カーティス・メイフィールドや、Sly & The Family Stoneやスティーヴィー・ワンダーなどのド名盤を何度も繰り返し聴いていたこともあり余計に。ソウル、というジャンルへの興味がまたグッと高まりました。
ベスト盤の2枚目以降もほとんどCDを持っているとはいえ、マスタリングが異なっていて、聴こえ方が全然違う。それが良くなっているかどうかの判断はイマイチできないんですが、違いを確認するのもまた楽しみのひとつです。空間的がより広がっている感じを愉しむには、スピーカー再生か、少なくともスタジオ・ヘッドフォンぐらいを使って聴くと良いでしょう。高級品ならまだしも手頃な価格帯のカナル型ヘッドフォンだと音が全部つぶれてしまって、音楽の質が変わってくるような気さえするので注意。初回盤限定のボーナス・ディスクではKinki Kidsに提供した大ヒット曲「硝子の少年」の山下達郎による仮歌バージョンが聴けたりします。これも面白かったですね。Kinki Kidsの節回しやニュアンスは、この仮歌をなぞってたのか……と思ったりする。
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