無垢/真実性

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カラマーゾフの兄弟 下    新潮文庫 ト 1-11
ドストエフスキー 原 卓也
新潮社 (1978/07)
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 エピローグの第三節で泣いてしまう。マーラーの交響曲第3番の5楽章にも私は同じような種類の感動を覚えるのだが、それはたぶん「子供」によって「罪」的なものが浄化されるような情景が存在するという点において類似しているからなのだろうか。それはとても分かりやすいことだけれど、個人的にものすごくツボ。「無垢なもの」が「悪意」を飲み込んでいく、というか。





 裁判のシーンでは「真実性」について考える。ハッとするのだけれど、この小説の「語り手」は「事件」の核心部分について一切語らないのだね。超越的な視点から物語られているわけではない。「真実」を語る人物は後々現れるのだけれど、それは歴史の挿入みたいなものであって、直線的な流れからは逆行するし、やはりそこで何がなされたか、ということは読者の目には触れない。徹底された隠蔽がしかれている。物語上において裁判は「(読者的な視点からみた)冤罪-事件」的に処理されてしまうのだけれど、なんら決定的なことではないのじゃなかろーか、なんて思う。たとえその第12編が「誤審」と銘打たれていたとしても、だ。





 なんて、ネタバレしないように書く努力をしてみたらなんだかよくわからない文章になってしまった。とりあえず、超おもしろかったっすよ。「こんな立派な人が自国の作家にいる国の作家志望青年は少し不幸なんじゃなかろーか(あまりにもドストエフスキーが立派過ぎるから)」って思うぐらいに。





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