再び、ルイジ・ノーノ

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Luigi Nono
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Luigi Nono Michael Gielen Sinfonieorchester des Südwestfunks Baden-Baden
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 先日、ジェルジー・リゲティ死去のニュースが入ってからというもの、ポスト・セリエリスム的世代に位置する作曲家についての興味が湧き始め、どのあたりが聴いて面白そうか調べている。情報源は主にウィキペディア。目下のところ、ヘルムート・ラッヘンマンが面白そうだな、と思っているのだが、ブラームスの交響曲のスコアが欲しかったり、また携帯電話を失くしたせいで機種変更をしなくてはいけなくなったりして兎に角金銭的に余裕が無い。




 ので、ラッヘンマンの師でもあったルイジ・ノーノの作品を聴き直した。上に挙げたのはノーノの作品集で、演奏はミヒャエル・ギーレンの指揮による南西ドイツ放送交響楽団。このコンビはとても良い仕事をするので好きだ。収録されている作品は《カノン的変奏曲》(1950)、《建築家C・スカルパ、その無限の可能性に寄せて》(1984)、《進むべき道はない、しかし進まなければならない…アンドレイ・タルコフスキーに》(1987)の3曲。極左的な政治思想と作品の関連性については浅田彰の批評がネット上で読むことができるけれども*1、このアルバムの中で聴ける作品は思想から離れたものとして聴いてみると良いセレクトなのかもしれない。《カノン的変奏曲》と他の2曲の間にかなり時間が空いているけれども。





 《カノン的変奏曲》について。





 これはルイジ・ノーノのデビュー作と言っても良い記念碑的作品。この時点でヴェーベルン的とも言える音列へのストイシズムが感じられるところだが、即物的なタイトルからも受け取られるように「絶対音楽」を作ろうとしていたのではないだろうか、なんてことを思ってしまう。中間部、静寂の中から各楽器がカノン的にフレーズを受け継いでいくところの緊張感ある場面構成などが美しい作品である。このとき、ノーノは26歳。既に完成されたものを書いているのがすごい。聴き直しているうちにこの時期の作品をもう少し聴き探してみるのも面白いなんて思ってしまった(ラッヘンマンは…)。





 その後、50年代後半からノーノは独自の道を歩むことになる。ブーレーズやシュトックハウゼンの激しい批判を受けながら。70年代の終わりぐらいまでは政治的メッセージを織り込みつつ、テープなどを用いて「新しい響き」を模索しているのだが、この時期に関して私はちょっと「詩に頼りすぎているかな…」と思ってしまい、繰り返して聴くことが無くなってしまった。





 好きなのは80年代に入ってから、ノーノが死ぬまでの10年間に書かれたものだ。


 

 この時期、最も音楽は点描的になり、ドライでザラついたモノクロームの「なにか」を観ているような作品が多い(ハンス・ツェンダーの作品も点描的でモノクロっぽいのだが、ツェンダーの東洋/禅志向が『水墨画』と直接イメージを結びつけるのに対して、ノーノはそういった具体的なイメージと結びつけることができないでいる)。このとき、ノーノはもはや歌詞や政治的メッセージに頼らない。しかし、そこに「弱さ」はない。作品は「音響詩」として完成されている。もちろん、それは抽象的で「意味」が掴み取ることは難しいけれども、音それ自体が美しいのだ。《建築家C・スカルパ、その無限の可能性に寄せて》、《進むべき道はない、しかし進まなければならない…アンドレイ・タルコフスキーに*2》はこの時期で最もまとまりがある作品と言えるだろう(今気が付いたけれど、どちらも「追悼曲」ですね)。



現代音楽のポリティックス
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 『現代音楽のポリティックス』では「音楽と詩の関係性」について語るノーノの講義録が読める。作曲家自身の言葉に触れたからと言って、劇的に晩年のノーノの作品が面白く聴けるようになるだとか*3、「理解できる」とは限らないけれどすごく面白いので紹介してみた。ノーノと関係ないところにしても作曲家、近藤譲の音に対する態度は個人的に影響を受けた。「音、それ自体が美しい」。まぁ「美しい」にこだわる必要は無いんだけれど。


 


 良い本ですが絶版です。平凡社ライブラリーとかに入らないだろうか。







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セリー主義
セリー主義
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オムニバス(クラシック) ポリーニ(マウリチオ) ブーレーズ アンサンブル・アントン・ベーベルン ノーノ アバド(クラウディオ) ウィーン・ジュネス合唱団 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 シュトックハウゼン
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 アバド/BPOによる《進むべき道はない、しかし進まなければならない…アンドレイ・タルコフスキーに》、《愛の歌》(初期作品)を収録。他にもブーレーズのピアノ・ソナタ第2番(ポリーニの超名演)、シュットクハウゼンの《グルッペン》を収録。



ノーノ:断ちきられた歌
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 ブーレーズのセリエリスム脱却直後の作品。《断ちきられた歌》を収録。第二次世界大戦中にナチスに逮捕されたレジスタンスの青年の「辞世の句」的手紙をテキストにした非常にメッセージ性の強い作品。



ノーノ:力と光の波のように
トレクス ラインハルト=キス(ウルスラ) ライプツィヒ放送合唱団 ラインハルト=キス(ウルスラ) トレクスラー(ロスビタ) ハーゼロイ(ウェルナー) ライプツィヒ放送交響楽団 ラ・リカータ(ジュゼッペ) ノーノ ノイマン(ホルスト) ケーゲル(ヘルベルト)
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 ノーノが最も政治的に過激だった時代。中期作品《力と光の波のように》(テープ使用)、《墓碑銘第1曲》、《墓碑銘第3曲》を収録。ヘルベルト・ケーゲルの解釈が光る。



Nono: La Lontanza Nostalgica Utopica Futura
Luigi Nono Melise Mellinger
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 ノーノの絶筆であり、ソフィヤ・グバイドゥーリナの監修によって完成した傑作《未来のユートピア的ノスタルジー的遠方》を収録。




*1http://www.kojinkaratani.com/criticalspace/old/special/asada/ic027.html


*2:ちなみにギーレンの演奏と、アバドの演奏では演奏時間が全然違っており、細部も微妙に違う。ちょっと気になる


*3:初期と晩年を比べてみると、初期の作品は限りなく「伝統的な音楽だ」と思う





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